就寝タイム
静子「和也 疲れてない?」
和也「うん なんか大丈夫…。 島の太陽に 当たってたからね。」
静子「そうかもね でも もう寝なさい。 お母さん 民宿の人達に いろいろ お願いする事あるから。」
和也「うん おやすみ。」
静子「おやすみ…。」
文也「おやすみなさい。」
静子「文也 明日 お母さんと学校 行く? 手続きは もう済んでるけど…。」
文也「いい 自分で行くから。」
静子「じゃ おやすみ。」
和也「お母さん 恵里と恵達には 言わないで…。」
静子「うん 分かった。」
古波蔵家
静子「あの ちょっと よろしいですか?」
勝子「あ どうぞ…。」
ハナ「お茶 いれようね。」
静子「もう 何軒も 病院という 病院で 診てもらいました…。 でも どこでも 結論は同じで『もう 治療の方法はない』って。 あとは『本人の生きようとする力が どれだけあるか』だって…。」
勝子「そんなに重い病気には 見えなかったけど…。」
静子「多分 気持ちに 今 張りがあるんだと思います。 さっきみたいに 笑ってるあの子 もう何年も見た事 ありませんでしたから。」
勝子「そうですか…。」
静子「ずっと 病院暮らしだったんです。 子供らしい 楽しい事 全然 知らなくて…。 そんなあの子が ある日 突然 言いだしたんです。 どうしても『こちらに行ってみたいんだって。 暮らしたいんだって。』 と…。」
恵文「何でですかね? 何で ここに?」
静子「あの…。 これ…。」
勝子「これ…!」
恵文「あ これを見てからに? これはね もう 10年ほど前に小浜から 東京に行った島の人に 作ってもらって 東京の代理店とかいうんですか? 旅行の。 そこに置いてもらったんですよ。 これがねえ なんでかね また?」
静子「飛んできたんだそうです。」
勝子「飛んで?」
静子「ええ 病院の屋上のベンチ。」
静子「あの子のお気に入りの場所があって。」