一風館
管理人室
恵里「どうしたの?」
誠「俺さ… 俺よ。」
恵里「何?」
誠「沖縄に帰ることにする。」
恵里「え?」
誠「そうすることにした。」
恵里「何で?」
誠「『勇気ある撤退』というヤツだねぇ。」
恵里「仕事は?」
誠「辞表 出してきた。」
恵里「何で?」
誠「この間よ 悔しかったさぁ。 あの 誰だっけ? このアパートの黒いの着た 変な女。」
恵里「ああ 城ノ内さん?」
誠「そうそう 思いっきり 言われたからなぁ…。」
恵里「うん。」
誠「あんなに ボロクソに言われたの 生まれて初めてかもしれないな。」
恵里「うん…。」
誠「でもさ 悔しいけどよ 『しかたないかなあ』って 俺は 思った。 あの人の言うとおりだよなぁ。 悔しいけど 言うとおりだよな。 周りや 東京のせいにしてさ いじけてただけ…。 カッコ悪いさ そんな男。」
誠「それで 決めた。 『意地を張るの やめよう 素直に 負けを認めよう』って。『また ゼロから やり直そうかな』って…。 そう思ったさ。」
恵里「そう…。」
誠「でもよ 野球がダメだったとして 俺の人生は まだまだ 無限大の可能性を秘めてるわけだろ? もしかして 歌手になって スターになってしまうかも…。」
恵里「ないない。」
誠「何で?」
恵里「だって あんた 音痴さ。」
誠「そんなことないさぁ。」
恵里「せっかく 会えたのにねぇ 東京で。 心強かったのに 誠がいて。」
誠「なあ 恵里。」
恵里「ん?」
誠「俺 ずっとさ 冗談みたいに お前の事 好きとか 結婚しようとか 言ってたさぁ。」
盗み聞きをする真理亜w
恵里「うん 言ってたよ。」
誠「あれさ 忘れて…。」
恵里「え?」
誠「今から 冗談じゃなくて ちゃんとした気持ちを話すからさ。」
恵里「誠…。」
誠「恵里。」
恵里「はい。」
誠「俺と一緒に いないか? 俺と一緒に 沖縄に 帰ろう?」
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