沖縄
古波蔵家
勝子「(ため息)」
恵文「もしもし? 恵里! お父…。」
勝子「あ ごめんなさい。」
ハナ「で なんて?」
勝子「恵里が ちゃんと話をするから 任せてくれって…。」
恵文「ふんふん。」
ハナ「それは どうかねぇ。」
恵文「何でよ?」
勝子「家出の先輩ですもんねぇ。」
ハナ「そうねぇ。」
恵文「そんな… また 1人 いなくなってしまうわけ?」
東京
一風館
マンデリン
恵達「ドッコイショ! ああ 疲れたね。」
恵里「『ああ 疲れた』 じゃ ないさぁ。 どういうつもり?」
恵達「何が?」
恵里「何で 家出なんか するの?」
恵達「人のこと 言えないだろ? 家出の先輩の くせして。」
恵里「え? あ それと これとは 別さ。」
恵達「何で? 一緒だよ。」
恵里「何で 東京なの? あんたは。」
恵達「俺 音楽 本気で やろうと思って。 そうなると やっぱり 東京かなと。」
恵里「高校は?」
恵達「やめる。」
恵里「え?!」
恵達「必要ないからさ ロックやるのに 学歴は…。 うん!」
恵里「チョット 待ちなさい。 沖縄だって ロックは できるでしょう?」
恵達「まあね 確かに 東京の方が 情報とか早いと思うよ。 でも 沖縄のロックは こう 水準が高いわけさぁ。」
恵里「じゃ 沖縄で やれば いいでしょ。」
恵達「家を出たかったんだよね。」
恵里「え? どこが嫌なのよ あの家の。」
恵達「だから 人のこと言えるの? 先輩。」
恵里「それは いいの チョット置いといて。 何で? 言ってごらん。」
恵達「いや 全然 嫌じゃないよ。 全然 好きだよ 自分の家族。」
恵里「じゃ 何でよ?」
恵達「だから ロックやってくには あの家に いると 緊張感が足りないんだよ。」
恵里「ん?」
恵達「いや だから こう… 孤独な感じとかさ 誰も 俺の事 分かりゃしないんだ みたいな そういうのが必要な訳。」
恵達「でも あそこにいると ダメなんだ 全然ないからさ。 『ま いっか』って 感じでしょ? ダメなんだよね それじゃ…。」
恵里「よく分からないさぁ。」
恵達「いいよ 姉え姉えには 分からなくて。」
恵里「とにかく お母さんに 電話しなさい。 心配してるから。」
恵達「嫌です。」
恵里「しなさい。」
恵達「ヤダ!」
恵里「ダメ!」
恵達「家出してきて 過ぎに『無事です』なんて 電話できる? 自分だって しなかったでしょ?」
恵里「え? …いや だから それは。」
恵達「しかし 狭い部屋だねぇ。」
恵里「悪かったわね。」
恵達「ま いっか もともと 同じ部屋で 暮らしてた訳だしね。」
恵里「え? あんた ここにいるつもり?」
恵達「当たり前でしょう。」
恵里「何で?」
恵達「『何で』って 東京に 姉え姉えが いるのに わざわざ 違う所に行くわけ?」
恵里「あんた 孤独な感じとか 欲しかったんでしょ? そう言ってたぁ。」
恵達「それと これとは 別なんです。 いきなり 1人は キツイでしょ? よろしく お願いします 先輩。 それより 腹へったよ。 何かある? 姉え姉え。」
恵里「ありません。」
恵達「姉え姉え。」
恵里「甘ったれるんじゃないよ!」
恵達「何で?」
部屋から様子を見ている真理亜
真理亜「男?」
モカ
容子「何? え?」
恵里「とにかく お願いします。」
容子「何? 何なの?」
グアテマラ
真理亜「あ!」
恵里「お邪魔します。」
真理亜「え? あんた 誰?」