ゆがふ
兼城「へえ お母さんも 来たの?」
恵里「はい 後で あいさつに来ます。 よろしく お願いします。」
兼城「はいはい 仲のいい家族だねぇ。」
恵里「はい 家族が 私の自慢ですから。」
兼城「へえ 沖縄の子だねぇ。」
恵里「うちのお母さんは きれいだから 好きにならないで下さいよ。」
兼城「はいはい。」
恵里「ハハハハハ。」
(戸が開く)
恵里「いらっしゃいませ! 来てくれたんですね?」
真理亜「そうか あんたが作るの?」
恵里「チョット 待って下さいよ。 失礼しちゃうなぁ。」
兼城「食べてって 真理亜さん。」
真理亜「(ため息) 一番 失敗しなそうな料理。」
恵里「何ですか それ…。」
兼城「何だったかな?」
恵里「考えないで下さい 店長も。」
兼城「どうも すみません。」
(戸が開く)
恵里「いらっしゃいませ! あれ? 昨日も いらして 頂きましたよね?」
OL「はい。」
恵里「どうぞ どうぞ。」
OL「会社 近いんですけど 沖縄料理って 余り 食べたこと ないし ヘルシーっぽいし 安いから 皆に教えて 連れてきたんです。」
恵里「ありがとうございます。 これからも よろしくお願いします。 こちら メニューです。」
兼城「これが 口コミというヤツかねぇ。」
(戸が開く)
恵里「いらっしゃいませ!」
兼城「なんか 忙しくなりそうだね。」
バイト中の恵達
作業員「にいちゃん 頑張るねぇ 細い腕で…。」
恵達「ありがとうございます。」
作業員「ほれ。」
恵達「あ! どうも。」
作業員「バイト代 何に使うんだい?」
恵達「田舎 帰ろうと思って 飛行機代 稼がないと。」
作業員「ほ~う 田舎 どこだ?」
恵達「沖縄です。」
作業員「そりゃ また 遠いなぁ。」
恵達「はい また すぐ出てくるんです。」
作業員「ん?」
恵達「訳 分かんないですよね。 でも そうしないと 家族の一員でいられないんですよ。」
作業員「うん。」
ゆがふ
店の前
恵里「ありがとうございました!」
店内
恵里「今日は 昨日より お客さん 増えましたね。」
兼城「そうだねえ よかったね。」
恵里「はい。」
真理亜「ねえ。」
恵里「はい?」
兼城「ん?」
真理亜「1人で来てた女 いたでしょう?」
恵里「ええ ああ 眼鏡かけた?」
真理亜「よく 来るの?」
兼城「初めてだねぇ。」
真理亜「あ そう…。」
兼城「何で?」
真理亜「いや 仕事中の顔だなぁと 思ってね。」
恵里「仕事中? どんな顔ですか?」
真理亜「ああいう顔よ。 じゃ ごちそうさま。」
真理亜「だから何?」
恵里「どうでした?」
真理亜「何が?」
恵里「いや『何が』って 今 食べたものですよ。」
真理亜「ああ… まあ いいでしょう。」
恵里「『まあ いいでしょ』…。 ありがとうございました!」
兼城「面白い子だね。」
恵里「そうですよねぇ 私 大好きです 真理亜さん。」