北栄総合病院
ナースステーション
恵里「駆血帯 忘れました! すみません!」
恵里「すみません。」
奈々子「自分で気づいたのは 偉いわ。 安藤さんの採決 やってみる?」
恵里「はい!」
内科病棟
恵里「じゃ いきますよ。」
安藤「痛いよ!」
恵里「あ! ごめんなさい!」
奈々子「抜かないで! 大丈夫です。 やり直しますね。」
退勤後
文也「恵里!」
恵里「文也君!」
文也「お疲れさま。」
恵里「うん お疲れさま。」
文也「でもさ びっくりしたよ。 いきなり 看護婦になるって 言った時も びっくりしたけど まさか この病院で会うとは。」
恵里「下柳婦長に お世話になってて。」
文也「そうなんだ いい人だよね。」
恵里「うん。」
文也「そもそも 偶然に会ったのも 驚きだけどね。」
恵里「うん。」
文也「コーヒーでも どう? 紙コップだけど おごるよ。」
恵里「うん。」
文也「はい。」
恵里「ありがとう。 おししい。」
文也「それが『おいしい』ってのは よほど疲れてるね。」
恵里「全然 ダメだから 私。」
文也「俺も そうだよ。」
恵里「え?」
文也「皆 そうなのでは? 医者も 看護婦も 一緒だと思うよ。 現場は やっぱり学校とは 全然 違うよね。 俺なんかも 結局 まだ 何も出来ないよ。」
恵里「文也君も?」
文也「うん 全然。 でも それは しかたないと思う。 何年も 学校で勉強してきただけの 人間が すぐに出来るほど 簡単な仕事じゃないって事だろ? それだけ すごい仕事に就いたって 事だろ? それを誇りに思わなくちゃ…。 違う?」
恵里「そうか。 そうだよねぇ。 そう考えれば 出来なくても しょうがないよね。」
文也「いや しょうがなくは ないけどさ。」
恵里「あ! そっか」
文也「頑張ろう。」
恵里「うん ありがとう文也君。」
『ああ 文也君の笑顔だ!』 恵里は そう思いました。 ずっと覚えていた 恵里の 大好きだった文也君の あの頃と 全然変わらない笑顔でした
遥「あ 上村 こんな所にいたんだ。」
文也「あ ごめん。 行かなくちゃ。 また ゆっくり 話そう。 皆の事 聞きたいしさ。 恵里の事も。」
恵里「うん!」
文也「じゃあね!」
文也「ああ 疲れたなぁ!」
恵里は 胸の奥が キュンと 痛くなりました。 恵里は 思い出の文也君ではなく今の文也君に 本当の恋を してしまったのかも しれないねぇ
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