翌日
(ノック)
アキ「じぇじぇ!」
夏「しっ! 行くぞ 行くぞ。」
春子「あら! 夏さん どちらへ お出かけ? 歌舞伎か何か?」
夏「晩飯 要らねえがら。 遅くなっからよ。」
春子「どこ行くのよ?」
夏「行くべ 行くべ!」
アキ「おらも遅くなるから。 んじゃな~!」
春子「『んじゃな』って…。」
東京シティスタジオ
鈴鹿「歌番組の収録は 巻く場合が多いから 急いで!」
<結局 鈴鹿さんも ついてきました>
アキ「なすてだ?」
鈴鹿「便乗よ。 あんたの おばあちゃんに便乗して 昔の事 水に流してもらうのよ。 こちらで~す! あっ!」
アキ「あれが? ゆき橋夫?」
鈴鹿「橋 幸夫だって!」
橋「ああ…。 ああ 女優さんの。」
鈴鹿「鈴鹿ひろ美です。」
橋「いや~ わざわざ お電話頂いたそうで。 見てますよ『静御前』。 どうも 初めまして。」
アキ「初めまして?」
鈴鹿「初めて… ではないんです。 デビュー作で『潮騒のメモリー』という映画で お世話になったんです。」
<覚えてないんだ>
橋「アハハハッ 思い出した。『潮騒のメロディー』ね。」
<駄目だ…>
アキ「ばっぱ? 夏ばっぱ! ばっぱ! お~い! 何で逃げるんだよ!」
夏「おら やっぱし 会わねえで帰ります。」
アキ「せっかく来たのに。」
夏「いやいや もう 顔見れただけで 十分だ。」
橋「夏ちゃん? 夏ちゃんだよね。 あの ほら 北三陸の 海女の 夏ちゃんだよね。 そうだろ?」
夏「はい… 夏です!」
アキ「じぇじぇじぇじぇ。 覚えてるんですか? 一緒に歌ったよね 体育館でさ。 いや~ 懐かしい。 でも変わんないね。」
夏「橋さんこそ いつまでも お若くて…。」
橋「いや それは うれしいよ。 けど 君 誰?」
夏「あ… あの ま… 孫です。」
橋「えっ 孫?」
夏「はい!」
橋「夏ちゃんの?」
夏「はい!」
橋「ハハハハッ! 孫だってよ 鈴木さん。」
鈴鹿「…鈴鹿です。」
橋「あの~ これから 何かあるの?」
喫茶・リアス
勉「あったよ ユイちゃん! 見つけた!」
ユイ「マジで?」
ヒロシ「えっ 何 何? 写真?」
勉「おらが撮った。 ちょっと ピント 甘(あめ)えけど 夏さんと 橋 幸夫!」
ユイ「夏さん 若い。」