北三陸駅
アキ「おはよう!」
大吉「お~ 来たか アキちゃん。 ほれ 新車だど。 盗まれねえように ちゃんと鍵掛けろ。」
アキ「ありがとうね!」
大吉「うん。」
道中
アキ「あ~!」
ユイ「アハハッ 大丈夫?」
アキ「やばい!」
ユイ「アキちゃん ファイト!」
アキ「あっ 見えた。」
ユイ「ホント?」
アキ「あれ?」
ユイ「そう!」
北三陸高校
担任「え~ 東京から越してきた 転校生の 天野…。 あれ?」
アキ「あっ お母さん 天野って言ってました? じゃあ 天野にすっぺ。」
担任「すっぺって… ホントは どっちなの?」
アキ「どっちでもいいんだ。」
担任「いやいやいや いぐねえべ。」
アキ「アキちゃんって呼んでけろ。 よろしぐ。」
<もちろん 喜んでいる 人間ばかりではありません>
タクシー
黒川「そうか…。 それは よかった。 アキが元気なのは いい事だ。 うん。 アキのためには…。」
喫茶・リアス
春子「だから アキのためじゃくて 私のためなんです。」
<春子には 引き続き 店を手伝ってもらう事にしました>
春子「何で分かんないかな…。 手紙ちゃんと読んだ?」
黒川「読んだよ。 持ち歩いて 何度も読んでる。」
春子「だから 要するに そういう事よ。 今 私にとって 母親と向き合う時間が大切なの。 24年間 普通の親子とは 明らかに時間の流れ方が 違う訳でしょ? まあ 幸いさ 母も年取って まるくなったし。 今更なんだけどさ さんざん 親不孝してきたらね。」
黒川「お母さんに対する君の思いは 十分に伝わったよ。 でもね…。 僕の事が書いてないんだよ。」
春子「え?」
黒川「離婚の理由を 手紙に書いたって言ったよね。 なのに 名前すら書いてない。」
春子「書いてない?」
黒川「正宗の正も宗も書いてないよ。」
春子「ああ… 宗っていう字が 難しいからじゃない?」
黒川「全然簡単!」
春子「さとう宗幸の宗だもんね。」
黒川「覚えててくれて うれしいよ…。」
春子「…っていうか そのさ まず 家族の事を 第一に考えるっていうのを やめてみようか。」
黒川「じゃあ 僕は 何を第一に考えたらいいのかな?」
春子「安全運転とかさ。」
黒川「考えるよ。 ほかには?」
大吉「再婚とか?」
黒川「えっ 再婚?」
大吉「再婚しろ 再婚。 なんぼ待っても 春ちゃんは帰んねえ。 さっさと再婚相手見つけろじゃ!」
(携帯が切れた音)