天野家
<それに引き換え 私は 華もないし 存在感もない。 かわいいなんて 最後に言われたのは いつだろう? 海女になったのは いいけど ウニ一つ 満足の取れない。 しかも 今は謹慎中で 海に潜る事さえ許されない。 ただ 時間だけが過ぎていく>
夏「何だよ。」
アキ「…ううん。」
<浜へ出なくなってから 眠れない夜が増えました>
<家の中を 探検する事はありましたが 2階へ上がるのは この時が初めてでした>
<天野家に限らず 古い漁師の家は 独特な造りになっています。 金庫を隠すための 屋根裏部屋があったり 廊下が複雑に入り組んでいたり 隠し部屋があったり>
<そこは 1984年に夏で 時間が止まっていました。>
<チェック柄の変な髪型の若者たち>
<肩パットの男>
<猫の免許証>
<1984年といえば こんな出来事がありました>
♬『咲きほこる花は 散るからこそに美しい』
<そこは 春子が 18歳まで使っていた部屋でした。 アキは 躊躇しました。 同じ年頃の少女として 軽い気持ちで立ち入っては いけない領域のような気がして…>
(引き戸を開ける音)
春子「ただいま~。 やだ… こんなとこで寝てんの。」
アキ「お帰り。」
春子「あら まだ起きてたの?」
アキ「うん 眠れなくて。」
春子「早く寝ないと 明日お祭りだよ。」
アキ「おやすみ。」
春子「おやすみ。」
<そうです。 明日は待ちに待った 北三陸秋祭りなのです>