漁協
安部「すいません ただいま。」
安部「中学のは これしか…。 あ…。」
アキ「やっぱ いい。」
安部「え? 何で。」
アキ「だって ダサいんでしょ。」
安部「今見たらね… でも当時は 流行のヘアスタイルだったんだ。」
アキ「じゃあ 見る。 やっぱ いい。」
安部「わざわざ 家まで 取りに行ったのに。」
アキ「見だら死ぬ。」
安部「死なないわよ。」
アキ「見だら 石になる。」
安部「そんな 呪いの写真じゃねえし そこまで ダサくねえ。」
アキ「本当?」
安部「B組。」
アキ「アハハハハ! 安部ちゃん ウケる。」
安部「私はいい! 似合ってないから。 これ ほら これが春子さん。」
アキ「…。」
安部「アキちゃん?」
アキ「え?」
安部「石になったかと思った。」
アキ「なんないよ だって かわいいじゃん。」
安部「かわいかったんだよ。 わざわざ隣町から 男子が 見に来たんだよ。 ファンクラブもあったんだから。」
アキ「ユイちゃんみたい。」
安部「そうだね。」
アキ「ふ~ん。 じゃあ 何で あんなに怒ったんだろ。」
安部「え?」
アキ「『ブス!』とか『バカ!』とか どなられたの。 ひどくね? ただ 昔の写真 見たいって 言っただけなのに。 ねえ 何でだと思う?」
動揺する安部
アキ「安部ちゃん 何か知ってる?」
安部「分かんねえ。 おら何も知らねえ!」
<『何か隠してる』。 いかに鈍感で幼稚なアキでも その慌てようを見れば ピンと来ました。 安部ちゃんだけじゃない この町の大人たちは 昔 春子の過去を 知っている>
天野家
居間
春子「はい サラダ どうぞ。」
アキ「…。」
春子「何よ 早く食べなさい。」
アキ「うん。」
<でも それは ママにとっては 消したい過去なんだ。 理由は 分からないけど 触れちゃいけない 見ちゃいけないんだ>
隠し部屋
<見ちゃいけないものほど 見たくなるものです>
春子「何してんの?」
アキ「あ! ママ…。」