安部「…という訳なの。」
アキ「じゃあ 安部ちゃん 東京さ 行くんですか?」
安部「ううん 宇都宮。」
美寿々「栃木か? 中途半端だな。」
安部「北関東から じわじわ攻めて 様子見ながら 東京に進出する 計画なんだと。 だから 9月の本気獲りが 終わったら お別れなんだ。」
アキ「本気獲り?」
美寿々「アキは知らねえが 本気獲り 通称マジ獲り!」
長内「海女のシーズンが終わる 9月の最終日にはな 船で 沖さ出て ウニ取りまくるのしゃ。 ハハ!」
アキ「何それ? 楽しそう!」
夏「まあ アキには無理だな。」
アキ「なして?」
かつ枝「浜の浅瀬で ウニ取れねえのに 沖で取れる訳ねえべ。」
夏「何せ 本気獲りだがらな。」
北鉄
アキ「需要と供給?」
ユイ「そう だってアキちゃん自身 潜るのが好きで お客さんも 喜んでる訳でしょ? 需要と供給 釣り合ってるじゃん。」
アキ「そうなのかな。」
ユイ「そうだよ。 だって ダルダルの おばさんが潜って ウニ取ってきても お客さん 納得しない訳じゃん。」
アキ「ダルダルの おばさんって…。 誰の事 言ってんだろ?」
ユイ「アキちゃんが かわいいから 人 集まってる訳でしょ。」
アキ「いや いや いや!」
ユイ「そんなの みんな分かってるよ。 だから 割り切って ニコニコ笑っといた方が いいと思う。 私は そうしてる。」
アキ「ユイちゃんはさ。 電車乗って 記念写真撮ったり 握手したり サインしたりして 楽しい?」
ユイ「いや…。 楽しくはないけど それが今 望まれてる 自分だからね。」
<『かっけえ! 何だか 分かんないけど かっけえ!』…と アキは思いました。 望まれている自分を演じる。 それを 堂々と言えるユイは やっぱり プロなんだ。 私とは 違う>
回想
ユイ「アイドルに なりた~い!」
回想終了
喫茶・リアス
春子「ああ アキ お帰り! ねえ 何か食べる?」
アキ「う~ん。」
春子「うちに帰っても 何にも ないと思うんだよね。 お母さん 多分 寝ちゃってるしさ。 ここで 食べてくれると ありがたいんだけどね。」
アキ「ママって 子どもの頃 アイドルになりたいって 思った事ある?」
春子「え?」
アキ「ママにとって 憧れのアイドルって 誰?」
春子「何よ 急に。」
アキ「ピンと来ないんだよね アイドルって。 とりあえず かわいくて 歌とか 踊りとか うまくて 男が光る棒みたいなの 振り回して 応援してるイメージ? アイドルって。 10代の頃 憧れのアイドルとか いた? あ 聖子ちゃん?」
春子「まあ そうね そう そう そう。 あの 世代的に そんなんで。」
アキ「同じ髪型に してたんでしょ?」
春子「誰に聞いたの? そんな事。」
アキ「安部ちゃんが言ってた。」
回想
安部「この町で 一番最初に 聖子ちゃんカットしたのは 春ちゃんだもん。」
回想終了