長内「この辺でどうだ? 安部ちゃん。」
安部「いいんでねえか!」
長内「そっちは?」
かつ枝「いいど!」
長内「よ~し! ほんでは 2時間勝負だ!」
(サイレン)
安部「やあ!」
アキ(心の声)『すんげえ みんな本気だ。』
<本気獲りとは 3か月間 観光海女として働いた 海女さんたちにとって ちょっとした ボーナスです。 ふだんは ウニが いなくならねえように 加減しながら 取ってますが この日ばかりは 取りたいだけ 取ってようのです>
長内「みんな すげえべ。」
アキ「うん。」
長内「取ったウニは 今日のうちに売って 換金すんだから そりゃ必死だべ!」
監視小屋
春子「びっくりした!」
夏「何やってんだべ おめえ。」
春子「いいでしょ 別に。」
夏「貸せ 貸せ!」
春子「駄目だって。 私が 見てんだから。」
夏「ああ…。」
春子「ねえ 何で譲ったのよ。」
夏「あ?」
春子「私が潜ってた時には 絶対 代わってくれなかったのにさ。」
夏「さあな 年だからだべ? 入ったが?」
春子「まだです。」
浜
<まるで いつもとは 違う スイッチが入ったように 真剣な まなざしで 漁を続ける海女たち。 溺れても 流されても 今日は 助けてもらえないんだ。 そう思うと 足がすくんで 動けませんでした>
長内「どうする アキちゃん。」
アキ「え?」
長内「おっかねえなら やめといた方が いいぞ。 いつもお潜ってる海とは 全く別物だから。 潮も速いし 水温も低い。 ベテランでも 溺れる事あっからね。」
監視小屋
春子「お! 立った。」
夏「貸せ!」
春子「ちょっと あ もう!」
浜
長内「行くのが?」
アキ「うん!」
長内「大丈夫か?」
アキ「うん。 安部ちゃんと 約束したんだ。 自分の力で ウニ取って 一人前の海女さ なるんだ。 あ しゃっこい!」
長内「心配すんな! 何かあったら すぐ投げっから。」
監視小屋
夏「潜った!」
春子「嘘! ちょっと返してよ。 それ。 貸してよ! ちょっと見して ちょっと見して! もう ちょっと ちょっと!」