天野家
2階
春子「駄目 駄目 美寿々さん。 好きにさせちゃ。 そいつね ほっとくと すぐに図に乗るんだから。 うん…。 フフフッ。 うん うん。 何か ごめんね。 うん は~い。 はい よろしく~。」
春子「さて どこまで話したっけ? あ~ 聖子ちゃんだ 聖子ちゃん。 えっとね 聖子ちゃんのデビューが 1980年の春。 …で 百恵ちゃんの引退が 1980年の秋。 つまり 1980年 夏こそが 2大アイドルが ダブって存在した アイドル黄金期な訳よ。 ママにとっては 中2の夏ね!」
アキ「やっと ママ出てきた! それで それで?」
春子「み~んな 夢中だったのよ 聖子ちゃんには。 何しろ 歌がうまい。 もちろん かわいい!」
回想
♬『あー 私の恋は 南の風に乗って走るわ あー 青い風』
回想終了
春子「新曲が出たら すぐに覚えて もちろん 振りも覚えてさ。 そのころは ビデオなんか なかったから テレビの前に ラジカセ置いてね 録音して。」
回想
夏「帰ったど~!」
春子「し~っ!」
夏「組合長から でっけえ アワビ もらったど!」
春子「録音してる!」
夏「ほら アワビ! うるせえな。 ほら アワビだど!」
回想終了
春子「そうやって 応援してるとさ 何か こう… 元気出てくんのよ 自分も。 分かる? それが アイドルの条件だと思う訳!」
アキ「分がんねえ。」
春子「聖子ちゃんに 夢中のなってるとさ そのうち 自分も 聖子ちゃんになりたいって 思い始めるんだわ…。」
アキ「アイドルに?」
春子「う~ん まあ そうなのかな…。 試しに 聖子ちゃんカットにしてみてさ お母さんに すっごい叱られてさ。」
回想
夏「春子~! 中学生が 一丁前に パーマなど あてやがって! 聖子ちゃんや トシちゃんじゃあるめえし。 狭(せめ)え町なんだから 知り合いに会ったら 挨拶ぐれえしろ! バカ!」
回想終了
春子「でも 髪型変えたぐらいじゃ 何にも変わんないのよね。 でも アイドルになりたいっていう 気持ちは 強くなる一方でさ。 それで オーディション受けたりしてたの。 だから これはね それ用に撮った写真。」
アキ「へえ~ そうなんだ。」
春子「ださいでしょ?」
アキ「そんな事ないよ。」
春子「ホントに?」
アキ「うん。 ちょっと… 何だろう。 痛い子だなとは思うけど ださくはないよ。」
春子「痛いって… 言葉選んで それかよ。」
アキ「ごめん…。」
春子「まっ 確かにね その当時 痛いって言葉があったら それが一番 しっくりきたかもしんない。 写真と書類を送りまくって 落ちまくってさ。 その時点で気付けよって 話なんだけどね。 まあ 諦めきれなくてさ。 痛いよね~。」