スナック・梨明日
長内「おお 忠兵衛さん! ほらほら! 夏さんの隣に座って。 ほら!」
かつ枝「あれは何だっけ?」
大吉「ちょっと正宗さん。」
黒川「はい?」
大吉「あんだが こないだ入れた歌 何だっけ?」
黒川「ああ『潮騒のメモリー』。」
大吉「んだ んだ。」
<ついに 母が歌を生で聴く機会が やって来た。 アキは 期待に 胸を躍らせていました。>
春子「1番だけね 1番だけ。」
大吉「入った入った!」
長内「いよっ! 待ってました!」
(拍手と歓声)
♬『来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー』
(拍手)
♬『北へ帰るの 誰も会わずに 低気圧に乗って 北へ向かうわ 彼に伝えて 今でも好きだと ジョニーに伝えて 千円返して 潮騒のメモリー 17才は 寄せては 返す 波のように 激しく 来てよ その火を 飛び越えて 砂に書いた アイ ミス ユー 来てよ タクシー捕まえて 波打ち際の マーメイド 早生まれの マーメイド』
(拍手と歓声)
♬『置いていくのね さよならも言わずに 再び会うための 約束もしないで 北へ行くのね ここも北なのに 寒さ こらえて 波止場で待つわ 潮騒のメモリー 私はギター』
<ふだん 不機嫌でガサツな母が この時ばかりは まるで別人に見え アキは ただ その歌声に 身を委ねていました>
♬『来てよ その火を 飛び越えて』
アキ「かっけ~!」