天野家
♬『寄せては返す 波のように 激しく』
春子「激しい方が いいんじゃない? こういうのとかさ。」
アキ「それ相撲でしょ 何それ?」
春子「こういうのとか?」
アキ「いいの 激しいのこれ!」
春子「いいの?」
アキ「うん。」
春子「邪魔なのね ママね ごめんなさい。」
アキ「うん そう。 2人でやるから。」
春子「頑張って! 飲んで。 よかったら。」
ユイ「ちょっと休憩しようか。」
アキ「うん。 ごめんね。 ねえ ユイちゃん 高校出たら 東京行ぐの?」
ユイ「うん。」
アキ「そっか。 いいなあ。」
ユイ「だって アキちゃん 東京 嫌いなんでしょ?」
アキ「うん。」
ユイ「いじめられてたんでしょ?」
アキ「いじめられる個性もねえほど 埋もれてた。 引きこもる勇気もねえし いい思い出 ひとっつもねえ。 でも 今ちょっと 東京が懐かしい。」
ユイ「種市先輩?」
アキ「でも 大騒ぎして こっちに残るって決めたし パパとママも離婚したし 今更 東京に戻りでえなんて 言えね。 あ~あ 遠距離恋愛なんか でぎるのかなあ。 東京には おらより めんこくて『じぇじぇ!』とか言わねえ女子 いっぺえいるべ。」
ユイ「そろそろ行かなきゃ。」
アキ「え? まだ早(はえ)えべ。」
ユイ「バス停まで ちょっと歩くし。 じゃあ 明日ね。」
アキ「うん。」
ユイ「ちゃんと 種市先輩と話した方が いいと思うよ。」
アキ「え?」
ユイ「あの人 なかなか本音 言わないから。 バイバイ!」
アキ「バイバイ!」
<種市先輩が 本音を言わないって どういう意味? アキには全く 見当がつきませんでした>
道中
アキ「いや~!」
学校
種市「どうした?」
アキ「何か…。 何か ちゃんと話した方が いいと思って。」
種市「何を?」
アキ「何だべ おらだちの事かな。 先輩 おら 先輩の事が好きです! ずっと好きです!」
種市「うん。 ありがとう。」
アキ「で 何つうか それだげで 十分だったんです。 今までは。」
種市「うん。」
アキ「でも そうもいかねっていうか 先輩 あと1週間で いなぐなるべ。」
種市「うん。」
アキ「何かこう 離れ離れでも 安心できる保証というか ハッキリ言うとですね。」
種市「うん。」
アキ「つぎあってほしいんです! おらと 正式に つぎあって下さい!」
種市「ごめん そりゃ無理だ 天野。 ごめん。」
アキ「そうか。 そうですか。 そうですよね。 身軽な方が いいですもんね。」
種市「いや。」
アキ「遠距離恋愛なんて 面倒くせえですもんね。」
種市「いや。」
アキ「せっかく 東京さ行くのに 地元さ彼女さいたら 重いですよね。」
種市「好ぎな人がいるんだ。 誰かは 言わなくても分かるべ。」
アキ「分がんね。」
種市「ユイだ。 自分(ずぶん) ユイが好ぎなんだ。 …つうか もうつぎあってる。 正式につぎあってる バリつぎあってる。 遠距離恋愛だ。 遠距離恋愛バリバリだ。」
道中
アキ「うあ~!」