連続テレビ小説「あまちゃん」62回「おら、アイドルになりてぇ!」

ユイの部屋

ユイ「全部 嘘だよ。」

アキ「え?」

ユイ「お母さんの話。 声も 言い方も 噓くさいでしょ? 原稿 読んでるみたいでしょ?」

アキ「アナウンサーだからでねえか?」

ユイ「近所づきあいしないから お茶飲み友達も いない。 家事と手芸と韓国ドラマの再放送 それだけで幸せな訳がない。」

アキ「ユイちゃん…。」

ユイ「これ見てよ。」

アキ「GMTのホームページか?」

ユイ「いつの間にか出来てた。」

アキ「『全国のご当地アイドルが 一堂に会する新ユニット!!』。

アキ「『【地方から日本を元気に!】が コンセプトのアイドルグループ【GMT47】』。 この赤いとこは?」

ユイ「スカウト済みって事じゃない?」

アキ「宮城 埼玉 徳島…。 岩手は?」

ユイ「…まだ。 でも 油断してたら 赤になっちゃうよ。 クリックしてみ。」

『おばんで~す! 杜の都 仙台に すい星のごとく現れた せ~の!』。

3人『牛タンガールズです!』。

アキ「じぇじぇ! 何だ これ。」

ユイ「仙台限定のアイドルユニットだって。」

『私たちのデビュー曲が こちらの GMT47さんのサイト限定で 配信スタートしま~す!』。

3人『イエ~イ!』。

『それでは聴いて下さい。 牛タンガールズで【ずんだ ずんだ】』

♬『ずんだ ずんだ ずんだ ずんだ ずんだ ずんだ ずんだ』

ユイ「これ 2万ダウンロードだよ。」

アキ「じぇじぇ! これが!?」

ユイ「ちなみに『ずんだ』は 宮城県の郷土料理で 枝豆を潰して…。」

♬~(『ずんだ ずんだ』)

ユイ「うるさい!」

アキ「一日中 見でんの? 部屋さ籠もって。」

ユイ「だって 気になるじゃん。 本当は 岩手も赤だったのに 邪魔が入んなきゃ。」

観光協会

アキ「このままじゃ やばいと 思うんです。 ユイちゃん。 ほっといたら また家出するんじゃねえんかって。 いや 家出する気力もなくなる。 部屋に籠もって 毒ばっか吐いてっから…。」

菅原「まあ それは ご家族が ちゃんとケアして…。」

ヒロシ「気晴らしが必要だって意味だよね。」

アキ「とにかく 部屋から出さねえと。」

栗原「東京見物さでも連れてったら どうですか? 2泊3日ぐらいで。」

菅原「帰ってこなくなったら どうすんの?」

ヒロシ「ありえますね。」

池田「番組にも問い合わせ 殺到してるんですよ。『一日も早く 復帰してくれ』。『アキちゃんでもいいから 毎日 出してくれ』って。」

アキ「『でも』?」

池田「ああ ごめん。 ホントは『2人で出てほしい』って そういう声があるのは 事実です。」

菅原「ん? 潮騒のメモリーズ復活か?」

アキ「でも ママが…。」

菅原「春子さんが どうした?」

アキ「お座敷列車の時 3月で卒業するって約束したがら。」

回想

春子「芸能界とか アイドルとか チャラチャラしたの ママ 絶対 許さないからね。」

回想終了

アキ「…無理だ。」

栗原「ユイちゃんが 海女カフェで バイトすればいいのに。」

池田「そういえば お店の中に 小さいステージ ありましたよね。」

アキ「え?」

池田「あそこで歌ったら どうだろう?」

菅原「おっ! 潮騒のメモリーズ復活か?」

回想

アキ「デビューしたら ここで歌ってけろ。」

ユイ「ありがとう。」

アキ「エヘヘッ。 ほら ユイちゃん。」

春子『アキ』。

アキ「じぇじぇ!」

春子『いい? 芸能界とか アイドルとか チャラチャラしたの ママ 絶対許さないからね。 返事は!? 聞こえない!』。

回想終了

アキ「…はい!」

菅原「ん? 今の『はい』ってのは やりますっていう『はい』?」

アキ「いや いや いや…。 そ… 相談します。」

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