北三陸駅
ユイ「おなかすかない?」
アキ「ウニ丼 食ったから。 あっ ユイちゃんの分も 食っちまった。 ごめん。」
ユイ「フフフッ ウニ丼か~。 もう一生 食べる事ないんだろうな。」
吉田♬『俺(お)ら こんな村いやだ 俺ら こんな村いやだ 東京へ出るだ 東京へ出だなら』
ユイ「…嫌な歌。」
アキ「ずっと ここさ隠れてんのか?」
ユイ「だって 外 出たら 見つかるじゃん。」
観光協会
菅原「あ~ 栗原ちゃん やめなさい! 足立君 面白いよ 見ろ。 ほら! ハンカチ食っちゃう勢いだよ! やめなさい! ハンカチは食べ物ではありませんよ! どうせ食べるんだったら マヨネーズかけて食べろ。 足立君 面白いよって。」
北三陸駅
(吉田の鼻歌)
吉田♬『NEW YORK NEW YORK あいつを愛したら NEW YORK NEW YORK 星になるだけさ』
ユイ「東京の歌も そうそうないしね。」
アキ「なあ ユイちゃん。」
ユイ「嫌だよ。」
アキ「えっ?」
ユイ「アキちゃん行かなくても 私は行くからね。」
アキ「行ぐがら おらも。 心配すんな。」
ユイ「ごめん。 知ったた? うちの高校 修学旅行 東京だったの。」
アキ「じぇじぇ! じゃあ ユイちゃん 東京行った事あんでねえか!」
ユイ「骨折して行けなかった。 お風呂で転んで。」
アキ「じぇじぇ。」
ユイ「無理すれば行けたけどね。 でも 逆に よかったと思う。 最初の東京が修学旅行なんて ださいじゃない。 こんな田舎の 駒場と駒沢の違いも 分かんないような 田舎の高校生と一緒じゃ 東京に失礼だよ。」
吉田「冗談じゃないよ ユイ! 勘弁してくれよ ユイ! 何だよ 今更 ちらしずしに変更って! 気持ち切り替えらんねえよ! 母ちゃんに代わってけろ!」
ユイ「何の話だっけ? あっ そうそう だから… 私にとって 東京は特別なの。」
アキ「おらと全く逆だな。」
ユイ「え?」
アキ「ユイちゃん 先に言っとくけど おら 東京行ったら 別人になるからな。」
ユイ「え?」
アキ「口数減るからな。『じぇじぇ!』とか 言わねえからな! 基本 敬語になるからな! 一日1食になるからな! 歩く速度が 1.5倍になって 便秘になるからな。」
ユイ「アキちゃん…。」
アキ「ネガティブなポエム書くからな。 毎日 木や 草花に話しかけるからな。 毎日!」
ユイ「アキちゃん。」
勉「うん?」
スナック・梨明日
春子「あ~ お帰り 勉さん。」
北三陸駅
アキ「見られた!」
ユイ「大丈夫。 もう9時。 行こっか。」
アキ「うん。」
ユイ「あっ その前に ストーブさんに電話。」
アキ「え?」
ユイ「あいつが見張ってる限り バス乗れないじゃん。」