連続テレビ小説「あまちゃん」97回「おら、悲しみがとまらねぇ」

黒川「もう 3年も前ですか。 じゃあ ずっと一人で 秘密を抱えてたんですか。」

春子「誰にも打ち明けられなくて しゃべったら 楽になりました。 もう 思い残す事はないです。 帰ります。」

黒川「え?」

春子「上野まで送って下さい。 ここは 私が払っておきますんで。」

黒川「ずっと 応援してたんです! あなたを。」

春子「え?」

黒川「あの時 まだ 鈴鹿ひろ美も デビューする前だったでしょ。 だから僕 先に あなたのファンになったんです。 ファン第1号なんです あなたの。 だけど あなたは 表に出てこない。 絶対 出てこれない。」

黒川「しょうがないから レコード 買いましたよ 鈴鹿ひろ美の。『潮騒のメモリー』も『縦笛の天使』も『DON感ガール』も! あなたが歌ってる あなたの歌声だって思いながら 運転しながら 聴いた 聴いた 聴いた! リクエスト葉書だって送りましたよ。 あなたの声が聴きたくて。」

黒川「何か そのうち あなたの事が好きなんだか 鈴鹿ひろ美の事が好きなんだか 分かんなくなってきて 今じゃ 鈴鹿ひろ美の大ファンなんです もちろん春子さんのファンである事に 変わりないんですけど だけど 誰にも言えないからさ! 鈴鹿ひろ美の声をやってる人が 好きだなんて言えないじゃん! 言えないじゃん! ね? 言えないじゃん! ね?」

甲斐「警察 呼ぼうか?」

黒川「あっ お構いなく! すいません。 すぐ正気に戻りますんで。 ただ ファン第1号として ひと言だけ いいですか?」

春子「はい。」

黒川「あのね ここで諦めるなんて もったいないですよ。 あなたの歌に励まされて 僕は ここまで 頑張ってこれたんです。 横柄な客に罵られても 酔っ払いに絡まれても 後部座席 ガンガン蹴られても あなたの歌を聴いて 彼女も頑張ってるんだからって。 ないも 俺だけじゃない タクシー業界の みんな あんたのファンですよ!」

春子「鈴鹿ひろ美のファンでしょ?」

黒川「だけど 歌ってるのは あなたです! 日本全国のドライバーが あなたの歌声に癒されて 安全運転を心掛けるから 事故が減る! 春子さんの歌声には そういう力があるんです! ここは 僕が出します。」

春子「え? あ…。」

黒川「送りますよ 世田谷まで。 行きましょうよ。 歌いましょうよ。 東京には あなたの歌 必要としてる人が いっぱい いるんですよ!」

春子「ありがとう。」

回想終了

黒川家

黒川「それから その純喫茶店の常連になって 春子さんは 歌手には なれなかったけど 僕のお嫁さんになったんだ。」

アキ「かっけえ…。 かっけえよ パパ!」

黒川「そうか?

アキ「初めて かっけえと思ったよ パパの事! マジ リスペクトだよ パパ!」

黒川「そっか? よしよし ビールついでくれよ。」

アキ「でも 何でだべ。」

黒川「何が?」

アキ「なして ママは 一回 上野まで行ったのに 電車さ乗んねえで パパのタクシーで 世田谷さ戻ろうとしたんだ?」

黒川「ああ… それは ママに 聞いてみないと分からないよな。」

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