カフェー パピヨン 控室
音「ああ… もう こんな減って…。」
希穂子「音江さん。 ゆうべは お騒がせして ごめんなさいね。。」
音「いえいえ… あの…。」
そこへママが入ってくる
ママ「音江ちゃん いよいよ最終日ね。」
音「はい。 1週間 お世話になりました。」
ママ「残念だわ…。 あなた 鍛えれば 1流になれそうなのに。」
音「えっ? 怒られてばかりでしたけど…。」
希穂子「見込みがあるから怒られたんじゃない?」
ママ「さすが希穂子ちゃん そのとおりよ。 それぐらい 言われなくても察しなさい。ここで 何 勉強したのよ。」
音「すいません。」
ママ「フフフフ…。」
ボーイ「困るんですよ。 出てって下さい。」
鉄男「少しでいいですから。」
ボーイ「出てけって言ってんだよ。」
鉄男「お願いします!」
愛子「ママ 大変です! この前に人が…」
鉄男「話すだけですから。」
ホール
鉄男「何でですか!」
ボーイ「出てけよ!」
鉄男「別にいいでしょ 話すくらい!」
ボーイ「出てけって言ってんだよ。」
鉄男「少しですから お願いします!」
ボーイ「無理なんだよ。」
鉄男「希穂子…。」
鉄男「ちゃんと話がしてえ。 少しでいいから時間くれねえか?」
希穂子「お引き取り下さい。」
鉄男「希穂子…。」
希穂子「わからない? 迷惑してるの。 本当のことを言いますね。」
希穂子「福島を離れたのは あなたが重荷になったからです。 勘違いされて困ってたの。 お帰り下さい。」
恋愛の機微を目の当たりにした 音のカフェー勤務最終日でした。
古山家
久志「どうぞ。」
鉄男「よいしょ… はい 出来たよ。」
久志「おっ! おいしそうだ。 鉄男君 頂こうよ。」
裕一「ほら! 大将 ほら… 食べよう ほら!」
久志「まあまあ…。」
裕一「ああ… ありがとうね。 飲もう 飲もう。」
数時間後
鉄男「おっ… そうだ! あの時も おめえが1番に逃げたんだ。」
久志「覚えてないな。」
裕一「いや 久志の逃げ足の速さはね 学校… いやいや 宇宙1だよ!」
久志「危機対応能力にたけていると 言ってほしいね。」
裕一「あの先生 怖かったけどさ 4年の時 藤堂先生になってくれたの うれしかったな~!」
鉄男「ああ… 藤堂先生には頭が上がんねえ。」
裕一「懐かしいね~。」
久志「いいもんだね ふるさとの友達と飲むのは。」
裕一「うん!」
久志「裕一が鉄男君を東京に呼ぼうって 言いだした時は さすがに驚いたけどね。」
裕一「あっ ごめん ごめん。 あの時はね もう本当に舞い上がってました。」
鉄男「いや… うれしかったよ。 ここ最近 詩 書くことなんて忘れてたから。」
裕一「いや… しかたないよ。 仕事だってあるしね。」
鉄男「実は… 書いてみたんだ。」
裕一「えっ? 歌詞書いたの!? えっ? み み… 見せて 見せて! えっ?」
久志「『福島行進曲』。」
鉄男「俺なりの福島を書いてみた。」
裕一「いい… すごくいい。 す… すごくいいよ これ! ねっ?」
久志「ああ いいよ! 恋の歌だな。」
鉄男「ああ。」
裕一「『紺碧の空』書いた時ね 歌詞に共感するって すっごく すっごく 大事なんだって分かったんだよ。 こういう… こういう… 心に グッて グッて来る こういうの ずっと待ってた!」
裕一「僕ね… 福島捨てて ここに来たんだ。 でも… 忘れたことは一度もない! 大将が思い乗せた この歌詞で もう一度… もう一度 ちゃんと福島と向かいあいたい!」
裕一「大将 いや… 鉄男。 僕に… この詩で… この詩に曲をつけさせてくれ!」
鉄男「分がった。 いい曲つけてくれよ!」
裕一「ありがとう! ありがとう…。 久志 歌ってくれるよな?」
久志「僕以外… いるの?」
裕一「クッ フフフ…。」