音楽学校
環「早いわね。」
音「あっ…。 いろいろ取り戻さないといけないので…。」
環「今日は… 『今日も』だけど 古山さんは 5度以上 音が飛ぶと 不安定になる。 まずは そこを克服しないとね。」
音「はい。 先生だけです 普通に接して下さるのは。 みんな 変に気を遣ったり… 二言目には おなかの子どもに障るからって。」
環「私は あなたを特別に扱う必要なんて ないと思ってる。 あなたには ヴィオレッタとしての責任があるし それを全うする義務がある。」
音「はい。」
環「古山さん あなたは『椿姫』の舞台に出たいのよね?」
音「もちろんです! 舞台をしっかり務め上げて プロの歌手になりたいです!」
環「そう…。 1つ 確認してもいいかしら?」
音「はい。」
環「プロってね… たとえ 子どもがしにそうになっていても舞台に立つ人間のことを言うの。 あなた 当然 その覚悟はあるのよね?」
古山家
裕一「音 入るよ。 大丈夫? これ… うどん煮てみたけど。」
音「要らん。」
裕一「果物なら食べれそう? うん? えっ 起きんの?」
音「学校行かんと… 稽古ある。」
裕一「えっ? いや 駄目だよ 駄目駄目。 1日ぐらい休んだって平気だから。 ほら 寝て 寝て。」
音「ぐらい? 『ぐらい』って何?」
裕一「えっ?」
音「私は ヴィオレッタなの。 1日でも休んだら みんなに迷惑かかる。」
裕一「いや でも… でも 音 お母さんなんだから。 体 大事にしないと。」
音「お母さん… うん… お母さん お母さん お母さん…。 裕一さんにとって 私って何? 赤ちゃんのお母さんでしかないの?」
裕一「いや… そんなこと…。 いや そんなこと言ってないよ。」
音「裕一さん 代わりに産んでよ。 裕一さんは家で仕事できるから おなかに赤ちゃんいたって 大丈夫でしょう?」
裕一「代われるなら… 本当 代われるなら 代わってあげたいよ。」
音「どうして 女だけ…。」
それから2週間 音は つわりがひどく ほとんど 練習に 参加できませんでした。
プロの世界は厳しいですね・・・