国民の心を捉えたのは 明るいA面の曲ではなく 哀愁を帯びた短調のB面『露営の歌』でした。
久志「♬『勝ってくるぞと 勇ましく 誓って故郷を 出たからは 手柄たてずに 死なりょうか 進軍ラッパ 聴くたびに 瞼に浮かぶ 旗の波 土も草木も』
『露営の歌』は 出征する兵士の見送りに 歌われるようになり 爆発的な大ヒット。 この曲がきっかけとなり 裕一は 時代の波に 飲み込まれていくことになるのです。
古山家
廿日市「どうも 奥さん ご無沙汰しています。 これ つまらないものですが。」
音「廿日市さん わざわざすみません。 どうぞ。」
廿日市「お邪魔します。」
居間
音「今 呼んできますので こちらで お待ち下さい。」
廿日市「どうも ありがとうございます。」
音「はい。 裕一さん!」
廿日市「あら? お嬢ちゃんかな? かわいいでしゅね~。」
逃げる華ちゃんw
廿日市「お名前はなんていうんでしゅか~? お年は いくつでちゅか~? ハハハ… 恥ずかしいのかな?」
裕一「あ~ 廿日市さん こんにちは。」
廿日市「あ~ これはこれは 先生。」
裕一を盾にして隠れる華ちゃんw
裕一「どうした?」
廿日市「どうぞ どうぞ 先生 お座りになって お座りになって。」
裕一「よいしょ。」
廿日市「実は先生…。」
裕一「はあ。」
廿日市「『露営の歌』 なんと… 50万枚突破です1」
裕一「ご…。」
音「50万!?」
裕一「えっ? そ… そんなにですか?」
廿日市「いやいや… まだまだ伸びますよ。 未曽有の大ヒットです。 まあ 古山先生は いずれ こうなると 私 信じてましたけどね。 ハハハ…。」
裕一「先生?」
廿日市「あと 佐藤久志の抜擢も正解でした。」
裕一「ああ…。」
廿日市「これからは もう人気歌手の仲間入りですよ。」
廿日市「ありがとうございます。 (お茶を飲む)あ~。 あ~ そうそう 電話の架設は済みましたか?」
音「あっ はい。 お昼に電話の方が。」
廿日市「そいつは よかった~。 今回は 私が いろいろと根回ししましたから。」
裕一「ありがとうございます 本当に。」
音「ございます~。」
廿日市「これからも どんどん書いて頂きたいんで お願いしますよ。」
裕一「はあ…。」
廿日市「ハハハ。」
音「フフフ…。」
夕方
音「もしもし お姉ちゃん?」
吟「音! どうしたの?」
音「レコード会社の人に 電話つけてもらったんだけど 電話持っとる人 お姉ちゃんしか知らんかったから。」
吟「何だ そんなこと? あっ! 見たわよ 新聞。 裕一さんの名前 出とったね。 一躍 時の人じゃん。」
音「暮らしは何も変わっとらんけどね。」
吟「あっ ごめん もうすぐ夕飯だから。 また。」
電話を切る吟
吟「すぐ支度しますね。」
智彦「ああ… 音さんか?」
吟「裕一さんの会社の人が 電話つけてくれたんですって。 妹の旦那様が有名人になるなんて 世の中 何が起きるか分からないものよね。」
1年後
華「かさ。」
音「さくら。」
華「らっぱ。」
こどもたち「1 2 1 2 1 2!」
音 華「こんにちは。」
こどもたち「こんにちは! 1 2 1 2 1 2 1 2!」