連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第103話「悪魔くん復活」

台所

布美枝「このまま描かないなんて お父ちゃんらしくないなあ…。」

(物音)

玄関

布美枝「お父ちゃん?」

茂「ちょっこし出てくる。」

布美枝「こんな時間から どこに?」

茂「戌井さんとこだ。 あ そげだ。 さっきのどら焼き 少し包んでくれ。 土産に持っていこう。」

布美枝「はい!」

戌井家

居間

早苗「布美枝さん お元気ですか? 2人目 出来たんですってね。」

茂「はい。 年明けには 生まれるようです。」

戌井「それは それは おめでとうございます。 いや 実は 自分も 伺おうと思ってたところです。」

茂「お~ 奇遇ですな。 何か 急ぐ事でも?」

戌井「ええ…。 ああ まあ こっちは いいとして 水木さんの話 先に伺いますよ。」

茂「実は これを 描き直してみようと 思ってるんです。  『『週刊少年ランド』で やってみないか』と言われて…。」

戌井「ええっ?! 『悪魔くん』を テレビに?!」

茂「まあ テレビの件は 向こうが 考える事だが 何にしても 最初に言いだしたのは 戌井さんだ。 戌井さんだ。 まずは あんたに話をせねばならん と思ったんですよ。」

戌井「それで 忙しいのに わざわざ…。」

茂「あんたも 私も この本を出す時には 相当に 力を注ぎ込みましたからなあ。」

戌井「大ヒットを確信して 長編大作で挑んだあげく 原稿料も満足に払えずに 打ち切ってしまって…。 今も じくじたるものがあります。 こんな傑作を 中途半端に終わらせてしまった。」

茂「あの時は お互い散々でしたなあ。」

戌井「ええ。」

茂「うん これは ええ漫画だという 自信は あります。 けど 正直言って 迷うところもあるんですよ。 描き直して また大負けしては かなわんですから。」

戌井「分かります。」

茂「しかし 『悪魔くん』は いずれ 手をつけねばならん 宿題のような 気も しとったんですよ。 戌井さん?」

戌井「描くべきですよ 水木さん。 打ち切りを決めた時も 僕は この漫画が傑作である事は 少しも疑いませんでした。 『いつか 必ず 認められる日が来る』。 そう 奥さんに言ったのを 今も 覚えています。」

戌井「僕には もう一遍 『悪魔くん』で 勝負する資金はありませんが 『少年ランド』の大舞台で成功すれば 僕の編集者としての目に 狂いはなかったって事に なりますよね。」

茂「はい。」

戌井「描いて下さいよ。 水木さん。 もっとも 大幅な練り直しが 必要でしょうが。」

茂「ええ。 新しい もう一つの『悪魔くん』を 描くつもりでやらねばならんです。」

戌井「もう一つの『悪魔くん』か…。」

茂「と言っても 貧乏や不幸を打ち砕く ところは 変わらんですから 呪文も このまま 『エロイム・エッサイム エロイム・エッサイム』。」

戌井「『我は もとめ 訴えたり』! いや~ 楽しみになってきたなあ!」

(2人の笑い声)

戌井「そうか~! 『少年ランド』ねえ… う~ん!」

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