郁子「社長…。」
深沢「どうした? 何か 焦ってるのか?」
郁子「いえ…。」
深沢「まあ 一遍 水木さんと相談してみるよ。」
郁子「はい…。」
(ドアの開く音)
青年「失礼します。」
深沢「はい。」
青年「漫画 見てもらいに 来たんですが…。」
深沢「さっき 電話かけてきた人か?」
青年「はい。」
深沢「どうぞ 待ってたよ。 どれ 見せてごらん。」
青年「はい。 お願いします。」
深沢「どうぞ。」
郁子「これじゃ 何もならないじゃない…。」
深沢「このライバルの描き方は よくあるパターンに陥ってないか?」
青年「あ…。」
深沢「彼にも 人生がある。」
郁子「こんなの つまらない…。」
乾物屋
(商店街の賑わい)
靖代「和枝さん 店 開けっ放しにして 何やってんの?」
和枝「靖代さん 靖代さん! ビッグニュースよ!」
徳子「先生の漫画 テレビになるって。」
靖代「え~っ!」
山田家
和枝「たいしたもんだね。 私 店のお客さんに 自慢しちゃうよ。」
徳子「友達とかさ 親せきにも宣伝しないとね。」
布美枝「そんな大げさな事は…。」
靖代「何 言ってんのよ あんた! この商店街をあげて 応援するわよ!」
徳子「うん!」
和枝「そうよねえ。 ねえ 『悪魔くん』って 美智子さんのお店に置いてあった あの 怖い漫画でしょう?」
布美枝「あれを 親しみやすく 描き直したんです。」
靖代「ね~え それってさ どこでも 見られるの? 東京以外でも?」
布美枝「『全国だ』と言ってました。」
和枝「だったら 美智子さんにも すぐ知らせなくちゃね。」
布美枝「はい。」
和枝「美智子さん きっと 喜んで また 店中に いっぱい ビラ 貼るわね。」
徳子「昔のさあ… 読者の集いみたいに 懐かしいわね。」
靖代「よし。 こっちも負けずに ビラ貼って 宣伝しなきゃね?」
徳子「そうね。 パーッと盛り上げよう。 ね!」
布美枝「ありがとうございます。 けど どんなものになるのか まだ 分からないですし…。」
和枝「嫌だ! 面白いに決まってるじゃない!」
靖代「私 知り合いが テレビに出るのって 初めてだ!」
徳子 和枝「そうだね。」
布美枝「いえ 出ませんから。 漫画が ドラマになるだけで。」
靖代「あっ そうか。」
徳子「嫌だなあ。 もう トンチンカンで。」