連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第10話「ご縁の糸」

台所

ミヤコ「ごめんな。 あの子 あんたが トンカツの準備している事 知らんかったけん。」

邦子「ええんですよ。 これは 明日にでも うちのみんなで 食べましょう。」

ミヤコ「布美枝も 先に ひと事 聞いてくれたら ええのにねえ。」

邦子「誰でも考える事は同じですけんね。 『選挙に カツ』。 フフフッ。」

ミヤコ「気ぃ遣わせて すまんねえ。」

邦子「ううん。」

回想

松代「兄嫁さんの方は 気ぃ遣ってるんじゃないの?」

チヨ子「『小姑一人は 鬼千匹』って 言うけんねえ!」

回想終了

廊下

源兵衛「おう 布美枝。 ちょっこし ええか?」

布美枝「あ はい!」

源兵衛「金井さんから 注文が来とった。 出雲錦の特級 3本 届けてくれ。」

布美枝「はい。」

源兵衛「『還暦祝の席に出す』と 言っとったけん きれいに包んで 持ってきけよ。」

布美枝「分かりました。 貴司は?」

源兵衛「配達に出とる。 ミヤコや邦子じゃ 分からんけん 頼むぞ!」

布美枝「はい。」

玄関

(戸の開く音)

貴司「ただいま~!」

布美枝「あ お帰り!」

貴司「へえ! うまい事 包むなあ。」

布美枝「還暦のお祝いって言うから 鶴みたいに 折ってみたよ。 どげかな?」

貴司「ええよ ええよ! さすが 姉ちゃん。」

(柱時計の鳴る音)

布美枝「少しは うちの役に立っとるよね 私も…。」

<私が あの世に呼ばれてから 7年が 経ちました>

玄関

哲也「ただいま。」

俊文「お帰りなさい!」

邦子「お帰りなさい!」

<長男の哲也は 師範学校を出て 今は 中学校の先生を しています>

哲也「よいしょ!」

<妹の いずみは 17歳の高校生になり テニスに 熱中しています>

飯田酒店

貴司「はい 飯田酒店でございます。」

<随分様変わりした 飯田家の中で… 布美枝は 良縁に恵まれず 変わった事といえば 背が また 1センチ 伸びた事ぐらいでした>

貴司「姉ちゃん 電話だけんね。」

布美枝「あ は~い! ありがとう。」

貴司「はい。」

布美枝「もしもし。 あ チヨちゃん? ラーメン? ラーメンが どげしたかね?」

貴司「即席ラーメン?」

布美枝「チヨちゃんの ご主人が 食品会社にお勤めでな この間 売りにだした 即席ラーメンの実演販売会 やるとね。」

貴司「実演販売って 何するんだ?」

布美枝「ラーメン 作って お客さんに 試食してもら~とね。 で『手が足りんけん 手伝いに 来て』って頼まれたんだけど。」

貴司「そげな仕事 した事ないだろう。 大丈夫なのか?」

布美枝「ラーメンくらい 私だって 作れるよ。 でも 今日の今日だし 出かけたら 店 困るよね。」

貴司「う~ん まあ ええよ。 行ってくれば?」

布美枝「ええの?」

貴司「今日は 配達 少ないし。 姉ちゃんも うちにばっか おらんで たまには そげな事もした方が ええだろ。」

布美枝「そう… なら 行ってくるかね!」

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