飯田家
玄関
俊文「ただいま~。」
布美枝「はい ただいま~。 ひぃふぅみぃ… 8人も おる!」
客室
(源兵衛と客達の話声)
鈴木「源兵衛さん 今回は 駅前から 攻めた方が ええや。」
源兵衛「鈴木さん そう思うかね…。」
台所
<これが 兄嫁の邦子です>
布美枝「ただいま~!」
2人「あ~ お帰り。」
布美枝「お店で メンチカツ 揚げてもらってきたけん。 お弁当 出さんといけんでしょう? 『選挙に カツ』な~んて!」
ミヤコ「ああ…。 高かったろう。 すまんねえ!」
布美枝「ええのんよ。 でも 数が足らんかも。 8人も 来とられると 思わんかった。」
ミヤコ「お父さんの選挙の応援団 いつの間にか増えて ウフフ!」
布美枝「まあ ええか。 切ったら分からんね!」
邦子「俊文 ぐずらんかった?」
布美枝「ああ 大人しくしてたよ。『いつの間に子供 産んだかね』って 友達に びっくりされたけん。」
邦子「よう なついとるから 間違われるんだわ。」
ミヤコ「子供が おっても 当たり前の年だしなあ。」
邦子「よいしょ!」
布美枝「あっ ええよ。 私が運ぶ。」
邦子「あ だんだん!」
布美枝「『鬼千匹』には なりたくないけんね。」
邦子「え? 何の事?」
布美枝「フフッ 何でもない…。」
<源兵衛は 4年前に 市議会議員に当選…>
回想
後援者代表「飯田源兵衛 当選! 万歳~!」
<2度目の出馬を控え 飯田家は 来客が絶えません>
回想終了
客室
布美枝「どうぞ。 どうぞ。」
客1「あ だんだん。 こちら ご長男の お嫁さんですかや?」
源兵衛「いやいや これは あの 娘ですわ。」
客1 客2「なるほど!」
客2「選挙のお手伝いに 里帰り さっしゃったかね。」
源兵衛「あ いやいや まだ 嫁には やっとらんのです。」
客2「いや これは ご無礼しましたわ。」
源兵衛「あ もう とうに あの 嫁に行っとる年ですけんね。 じき 30娘ですわ。 いや お恥ずかしい。 ハッハハハハ!」
布美枝「お父さん…。」
客1「いやいや~ 娘さんが お父さんを支えておればこそ 後願の憂いなく 選挙活動に 励めるっちゅうもんですなあ。」
客2「そげですな! 家族の協力なくしては 選挙は 勝ち抜けませんけんなあ!」
源兵衛「まあ いつまでも 家に おられては 親は 困りますがな!」
(一同 大笑いする声)
源兵衛「鈴木さん!」
鈴木「あ~ そげじゃ そげじゃ…。」
廊下
布美枝「はあ… 『30娘』って あんな言い方 せんでいいのに…。」