連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第111話「鬼太郎ブームがはじまった」

客間

中森「こちらに置いて頂いた節は 大変 お世話になりまして…。」

布美枝「こちらこそ。」

<中森は 茂が 貸本漫画を描いていた時期に 2階に 間借りをしていた 漫画家仲間です>

茂「今 どうしとるんですか?」

中森「家内と2人 室内装飾の仕事で 独立して まあ なんとか やっています。」

茂「で… 漫画は?」

中森「きっぱり 筆を折りました。 しかし よかったと思っていますよ。 あのまま 漫画を続けていても 私なんか とても 生き残っていけなかったです。」

(風鈴の音)

中森「あの『鬼太郎』が よくぞ ここまで…。」

(風鈴の音)

倉田「先生 すんまへん。 『マンガセブン』さんが 原稿 待ってはります。」

茂「あ~ いかん!」

倉田「それと 『コミックBANBAN』さんが 『夜までに なんとか』って。」

茂「そっちもか…。 すまんですな。 ちょっこし失礼して。」

中森「どうぞ 仕事して下さい。」

茂「ゆっくりしてって下さいよ。」

布美枝「すいません。 せっかく 来て下さったのに。」

中森「いえ 親せきの法事のついでに 勝手に押しかけたんですから。 しかし 売れっ子なんですねえ。 原稿取りが押しかけるなんて 昔は 夢のようでした…。」

布美枝「はい…。」

中森「奥さんは 漫画のお手伝いは?」

布美枝「もう 私みたいな素人が 出る幕じゃありませんけん。」

中森「そうですか…。 私 『いいもんだなあ』と 思っていましたけどね。 夜中に トイレに下りていくと カリカリ カリカリ 音がするんですよ。 ひょいっと のぞくと 村井さんと奥さんが 並んで仕事をしていて…。 なんだか ほほえましくてね…。」

布美枝「中森さんも 片道だけの電車賃で 出版社に 原稿 届けに行ってましたね。」

いずみ「片道だけですか?」

中森「片道分しか 金がなかったんです。 ところが 原稿料が もらえなくて。」

いずみ「え?」

中森「一円も もらえずに 追い返されると 実に もう 絶望的な気持ちに なったものです。」

布美枝「はい…。」

中森「食うや食わずで 日々 飯との闘いでした。」

布美枝「そげでしたね。」

中森「しかし あの窮乏生活の中で 漫画を描き続けた 村井さんは すごいです。」

布美枝「ええ…。」

中森「奥さんも よく頑張りましたよ。 たいしたもんです。」

布美枝「私は 何も しとらんですよ。」

中森「いや あの頃の 先の見えない 泥沼のような苦しさ。 あれを乗り切ったのは 奥さんが 一緒に いたからこそですよ!」

布美枝「中森さん…。」

玄関前

(戸の開く音)

茂「中森さん! 元気で やって下さい!」

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