連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第123話「戦争と楽園」

布美枝「恐ろしい…。」

茂「今 思ってみても 不思議でならん。 次々と襲ってくるピンチを よう くぐり抜けられたもんだ。」

布美枝「こげな恐ろしい目に 遭われとったんですね…。」

茂「いや… 本当に恐ろしい目に 遭ったのは この後だぞ。 何日も かかって ジャングルを くぐり抜けて 俺は ようやく元の中隊に たどりついたんだが…。」

回想

茂「村井2等兵 ただいま帰りました。」

上官1「お前 なぜ 戻ってきた!」

茂「はっ。 せ… 戦況報告の 報告のためであります。」

上官2「命より貴重な銃を捨てて よく帰ってきおったなあ。」

上官3「皆 戦死した。 なぜ お前だけ 生きて戻ったんだ。 敵前逃亡罪だぞ!」

上官1「今回の事は 不問と付す。 ただし 次の戦闘では 必ず ばん回せい!」

上官2「真っ先に 貴様が突撃せよ。」

上官達「いいな 真っ先にだ!」

回想終了

茂「訳が分からなかった。」

布美枝「なして そげな むごい事を…?」

茂「今から思えば 前線で退却すれば 敵前逃亡 『その場で死ね』というのが 司令部の方針だったんだろうなあ。 マラリアに かかったのは それから 3日ばかり後だ。 体力も消耗しとったし 蚊の大群に襲われたのが やはり いけんだった。」

布美枝「ほんなら 爆撃されたのは そげな むごい目に 遭った時ですか…?」

回想

(爆撃の音)

回想終了

茂「高熱で うなっとる時に… やられてしまった。」

布美枝「昨日… 喜子に聞かれたんです。」

茂「ん?」

布美枝「『お父ちゃんには どうして 左手が ないの?』って。」

茂「ああ。 子供というのは… ある時 ふいに気づくのかもしれんなあ。」

布美枝「はい…。」

茂「うん そげだ…。 これ 見てみるか?」

布美枝「何ですか?」

茂「その『敗走記』はな この絵の続きを描いた漫画なんだ。」

布美枝「『ラバウル戦記』…。」

茂「復員して しばらく経った頃から 俺は 誰に頼まれもせんのに ただただ 毎日 これ 描き続けとった。」

布美枝「見ても ええですか?」

茂「おう ええぞ。 ほれ。 いつかは これを 漫画に描かんといけん。 ずっと そげ思っとった。」

<それは 生々しい戦地の絵物語でした>

茂「この間 ラバウルに行ったのはな そのための取材も兼ねとったんだ。」

布美枝「そうでしたか…。」

茂「本物の戦争を描かんといけん。 そげ思うと 力も入るし 構想も よくよく練らんといけん。 日々の締め切りもあるけん なかなか すぐには描けんな。」

(セミの鳴き声)

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