連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第127話「おかあちゃんの家出」

客間

布美枝「今日は 『ヤングウーマン』の取材ですか?」

郁子「ええ。 『人気漫画家の仕事の現場』って いう企画です。 『ヤングウーマン』では これが最後の仕事になるので どうしても先生に出て頂きたくて。」

布美枝「最後って どうしてです?」

郁子「今度 別の雑誌に移るんです。 来年創刊の新しい女性誌。」

布美枝「郁子さん 頑張ってますね。」

郁子「いい仕事しないと 深沢さんに 申し訳ないですもの。 大変そうですよね 『ゼタ』。 経営 苦しいみんたい。」

布美枝「ええ…。」

郁子「勝手な事 言うようですけど…。 頑張って続けてほしいと 思ってるんです。 『ゼタ』は 深沢さんにしか作れない 雑誌ですもの。」

布美枝「はい。」

郁子「大変といえば こちらもでしょう?」

布美枝「え?」

郁子「現代漫画者さんの倒産の件。 未払い分の原稿料 回収できるんですか?」

布美枝「え…。」

郁子「漫画映画の企画に出資した分は 厳しいかもしれないですねえ。」

回想

光男「知り合いの弁護士に 聞いてみたんだが 全額回収は難しいな。」

雄一「おいおい!」

茂「よその仕事で 穴埋めするしかないか。」

回想終了

布美枝「その事 話してたんだ…。」

郁子「あら? ああ いい写真! 布美枝さんは 幸せね。 いつも水木先生に 守られていて。」

布美枝「え?」

郁子「時々 思うんですよ。 私にも こういう人生が あったのかもしれないなあって。」

布美枝「郁子さん?」

郁子「ふっ… でも 両方 望むのは 欲張りですよね。」

茂の仕事部屋

(ペンを走らせる音)

(戸が開く音)

光男「兄貴 妙な苦情が来とるぞ。」

茂「何だ?」

光男「鬼太郎のオモチャで いい加減なもんが 出回っとるらしい。 電池で動くはずの人形が 動かんとか チャックが壊れたとか…。」

茂「うちには関係ないだろう。 どこの誰が作っとるのかも 知らんというのに こっちに苦情 言われても困るわ。」

光男「そりゃそうなんだが…。 どうも 製造元と 連絡が つかんようだなあ。」

茂「俺は 知らん! そげな話は お前が なんとかせえ!」

光男「ああ…。」

客間

回想

郁子「布美枝さんは 幸せね。 いつも水木先生に守られていて。」

回想終了

布美枝「(ため息) 私だけ何も知らんで…。 これが 守られてるって いう事なのかなあ…。」

中庭

布美枝「お父ちゃん?」

茂「ん?」

布美枝「どげしたの?」

茂「ああ 風に当たっとったんだ。」

布美枝「あんまり無理せんで下さいね。 現代漫画者の事 大変だって 聞きました。」

茂「いらん事 言うな。」

布美枝「え?」

茂「お前は 仕事の話に口出すな。 散歩 行ってくる。」

布美枝「『いらん事 言うな』か…。」

夫婦の寝室

布美枝「(ため息) お父ちゃん どげしたんだろう…。 近頃 ろくに話も聞いてくれん。」

回想

貴司「村井さんに しっかり ついていけよ!」

回想終了

布美枝「どげしたら ええだらか?」

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