連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第135話「妖怪はどこへ消えた?」

水木家

客間

布美枝「お疲れさま。 コーヒー 入れましょうか?」

茂「ああ。 なあ。」

布美枝「はい。」

茂「のんびり 旅行にでも行くか?」

布美枝「え?」

茂「いや そうも しとられんか…。 この先 金が入ってくるかどうか 分からんのだけん。」

布美枝「お父ちゃん…?」

茂「二度と 貧乏神に捕まらんようにと 逃げ続けてきたが… とうとう 追いつかれてしまいそうだ。」

布美枝「そげに 気弱な事 言わんでよ。 『仕事には 波があるものだ』って 言っとったじゃないですか。」

茂「いや…。 もう 鬼太郎達の出る幕は ないのかもしれん。」

布美枝「え?」

茂「子供達は ロボットアニメに夢中だし 大人は 金もうけに忙しい。 古くさい妖怪なんかの相手は 誰も しとられんのだろう。 なあ…。 妖怪なんてもの… ほんとに おると思うか?」

布美枝「どげしたの? 妖怪とは 子供の頃からの つきあいじゃないですか。 『塗り壁』や 『天狗倒し』にも 会っとるでしょう? お父ちゃん…。」

茂「俺にも よう分からんのだ! おかしいなあ…。 近頃 ちっとも 感じないんだ。 妖怪達の気配。 俺が 妖怪だと思ってきたものは 何だったんだろうなあ…。」

<それは 今まで 布美枝が 一度も見た事のない 自信をなくした 茂の姿でした>

台所

布美枝「あげな 弱音 初めて聞くなあ…。」

藍子「お父ちゃんは?」

布美枝「もう 寝とるよ。」

藍子「よっちゃんが 『高校 行かなくても いい』って 言いだした。」

布美枝「え?! なして?」

藍子「『もともと 学校が好きな訳じゃないし これからは うちも 経済的に 大変になるだろうから』って。」

布美枝「喜子が そんな事を…。」

藍子「もしかして 学費が払えないくらい 厳しい事になりそうなの?」

布美枝「ううん。 そげな事には ならんと思うけど…。」

藍子「うちは お父ちゃんの腕一本が 頼りだもんね。 おじいちゃん達も アシスタントさん達もいるし…。 漫画で食べていくって ほんとに大変だね。」

布美枝「うん…。」

藍子「よっちゃん 『新聞配達のアルバイトでもするか』って 言うの。」

布美枝「朝 起きられないのに?」

藍子「だから 私が 朝刊担当で 自分は 夕刊 配るんだって。」

布美枝「気持ちは うれしいけど 心配せんでも大丈夫よ。 もしもの時は お母ちゃんが働きに出るけんね。」

藍子「お母ちゃんは 無理だよ。」

布美枝「そう? ほんなら もうちょっと頑張ったら これで なんとかなるかもしれんね。」

藍子「お金の事は ともかく… お父ちゃん ほんとに大丈夫? 喜子 かなり ショック受けてたよ。 『妖怪はいない』って 言われたって。」

回想

藍子「どうしたの?」

喜子「どうしよう…。 お父ちゃんが 変になっちゃった。」

喜子「お父ちゃん!」

茂「ん? 何だ?」

喜子「教えてほしいんだけど 京都には どんな妖怪がいるの?」

茂「え?」

喜子「いっぱい いるよね。 古い都だもん。」

茂「おらんだろう。」

喜子「え?」

茂「何も おらんよ…。」

喜子「机に向かってるのに 何も描いてないの。 あんなお父ちゃん 初めて見た。」

藍子「今は ちょっと 注文が途切れてるだけだよ。」

喜子「でも 変だよ。 『妖怪はいない』 なんて 言うんだよ。 お父ちゃんが そんな事 言ったら 今まで描いてきた漫画は どうなるの?」

藍子「よっちゃん…。」

喜子「鬼太郎達 がっかりしちゃうよ。」

回想終了

スポンサーリンク







シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク