両親の部屋
修平「おや ないぞ。 あれ~ どこだ どこだ。」
絹代「何か 捜しとるんですか?」
修平「ここにあった香水の瓶 借りようと思ったんだが…。」
絹代「嫌らしい。 男が 香水なんか つけて!」
修平「何 言っとる。 あれは さっぱり しとって ええ においだけん ちょっこし 振りかけると 気分が ええんだ。」
絹代「おじいさんが におい プンプンさせて う~ 嫌だ!」
修平「年寄りだって しゃれた事しても ええだらが! ちぇっ!」
絹代「ふん!」
<事態は ますます悪化していました>
玄関
(ドアの開く音)
(ため息)
修平「全く 絹代の奴は ツンケン ツンケン…。」
布美枝「お出かけですか?」
修平「あげな不機嫌なばあさんと 一日中 顔 突き合わせては おられんわ!」
布美枝「行ってらっしゃい。 お母さん どげしたんだろう。 もしかして…。」
回想
浦木「イトツの奴 若い女と楽しそうに 銀座を歩いとったぞ。」
回想終了
布美枝「浦木さんが お母さんに話したんじゃ…。 それで… やきもち?」
休憩室
相沢「これ 刷り上がりました。」
茂「おう。 できたか。」
布美枝「いよいよ あと2か月ですねえ。」
相沢「仲人 受けて頂いて ありがとうございます。」
茂「ああ。」
相沢「よろしくお願いします。」
布美枝「こちらこそ。」
相沢「あ これ 僕と彼女の経歴とか なれそめとか 一とおり まとめてきました。 紹介のご挨拶 よろしく お願いします。」
茂「うん 分かった。」
相沢「すいません。 今日は 彼女も ご挨拶に 伺うはずだったんですが どうしても 仕事の都合が つかなくなって…。」
布美枝「お仕事でしたら しかたないですよ。」
茂「ふ~ん。 相手の人は 学校に勤めとるのか?」
相沢「はい。 専門学校の事務職員です。」
布美枝「しっかりした所に お勤めなんですね。」
相沢「本当は 先生に なりたかったらしいんですが…。」
布美枝「あら。」
相沢「先生は 転勤が多いし 彼女だけ 単身赴任というのも 困りますから 僕としては 今の職場で よかったです。」
茂「転勤か…。」
相沢「ええ。」
茂「そうか… 学校の先生は どこに 行かされるか 分からんのだな。」
相沢「彼女の友達は 最初の赴任地が 島だったそうで。 そこで 3年間。」
茂「島で 3年間…。」
相沢「最初は へき地に行く事が 多いっていいますからねえ。 あ 先生 式の進行の事なんですけど…。」
茂「う~む。」
相沢「あれ?」
茂「おい 藍子は どげなるんだ?」
布美枝「え?」
茂「離島に行かれたら 大事だぞ! なんとか せえ。」
布美枝「なんとかって どげするんですか?」
茂「行った先で そのまま 嫁にでも行かれてみろ。 もう ここには戻ってこんのだぞ。」
布美枝「そげん先の事… 今 どうこう言っても しかたないですけんねえ。」
茂「おや? おや おや おや おや おや おや… お前 まさか 藍子が 試験 受ける事 前から知っとったのか?」
布美枝「とんでもない。 私も この間 初めて聞いたんですよ。」
茂「あやしい!」
布美枝「あら。 あらららら… なしてそげん勘ぐるような事 言うんですか? 私が いつ お父ちゃんに 秘密を作りました?」
茂「お前が この一大事に 妙に落ち着いとるけんだ!」
布美枝「一大事って… まだ 試験も 始まってませんよ。」
茂「手遅れになったら どげする!」
布美枝「けど…。」
茂「はあ~ ああ お前は ぼんやりしとるなあ。」
布美枝「私だって 何も 知らんだったですけんね!」
相沢「先生?」
光男「おい どうしたんだ?」
菅井「何か あったんですか?」
布美枝「もうっ…!」