台所
喜子「これ?」
布美枝「うん。」
子供部屋
(ノック)
布美枝「藍子 まだ頑張っとるの?」
藍子「うん。 夜食に食べる?」
藍子「わ! 芋ぜんざい! いただきます!」
布美枝「授業の準備?」
藍子「うん。 学級通信 作ってるの。」
布美枝「ふ~ん。 あら! かわいい絵!」
藍子「これ 『エースくん』。 うちの学級のキャラクターだよ。」
布美枝「う~ん。 『今週のエースくん』。」
藍子「これ 子供達に すごい人気なの。 勉強やスポーツで 目立たない子供にも いいとこ いっぱいあるでしょ。 そういう 子供達の頑張りを みんなに紹介しようと思って。」
布美枝「ええ事 考えたね。 藍子 なかなか やるわ!」
藍子「こっちが頑張った分だけ 子供達は 応えてくれるから。 やりがいがあるよ 教員は。」
布美枝「そう。 けど あんまり 無理せんでよ。 喜子も心配してたわ。 『最初から張り切ったら 疲れてします』って。」
喜子「(寝言で)もう 食べられない!」
藍子「あっちは のんきすぎ。 さて! もう一仕事しよかな!」
布美枝「うん。 藍子 頑張れ!」
台所
布美枝「あら お父ちゃんも 芋ぜんざい 食べる?」
茂「『も』って 何だ?」
布美枝「藍子の夜食用に作ったんです。」
茂「あいつ まだ 仕事しとんのか?」
布美枝「よう 頑張っとるみたいですよ。 学校でも。」
茂「何だ! うまくいっとんのかあ! それじゃ 当分 辞めんなあ。」
布美枝「また そげな事 言って。 しばらくは 会社 手伝わせるの 諦めた方がええすよ。」
茂「うん。 あ そげだ。 さっき 光男から電話あったぞ。 痛み止めが効いとるけん 2~3日もしたら 出てこられるそうだ。」
布美枝「あら! よかったですね。」
茂「まあ たまには 喜子に手伝って もらうのもええけどな。」
布美枝「いろいろ 失敗したって 気にしてましたよ。」
茂「そげか? 初めてにしては 上出来だったがな。 喜子は 目の付けどころが 面白いのが ええわ。」
布美枝「藍子も喜子も よう やってますね。」
茂「ああ。」
<娘達の成長を うれしく思う 布美枝でした>
<ところが…>
玄関
布美枝「どげしたの? お腹でも痛いの?」
藍子「ううん。 何でもない。 行ってきます!」
<5月の終わり頃から 藍子は 時折 元気のない様子を 見せるようになって…>