源兵衛の部屋
布美枝「お父さん。」
源兵衛「ん?」
布美枝「よくなったら 歌 聞かせてね 『安来節』。」
源兵衛「ああ…。」
布美枝「『近頃 よう歌っとる』って お母さん言っとったよ。 私は 2回しか聴いた事ないけど。」
源兵衛「そげか…。」
布美枝「最初は 子供の時…。 お母さんの枕もとで 一緒に歌っとったね。 次は 私の婚礼の時で…。」
回想
源兵衛♬『安来千軒』
回想終了
布美枝「『枝も栄えて 葉も茂る』と 歌ってくれた。」
源兵衛「ああ…。」
布美枝「あの時は… 緊張しとったし お婿さんが酔っ払って倒れたりで 気づかんだったけど…。 『枝も栄えて』には 布美枝の枝。 『葉も茂る』には しげさんの名前。 両方 ちゃんと 入れとってくれたんだね。」
布美枝「♬『枝も栄えて 葉も茂る』 お父さん… 眠ったの?」
源兵衛「♬『枝も栄えて 葉も茂る』 歌のとおりになれよ。 布美枝。 ええな。」
布美枝「…はい。」
源兵衛「うん…。」