連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第34話「アシスタント一年生」

(置き時計の時報)

布美枝「あ そろそろ 郵便の時間。 今日も いっぱい来とるかなあ!」

玄関前

(犬のほえる声)

布美枝「あれっ…?」

(犬のほえる声)

布美枝「何しとるんですか?!」

(犬のほえる声)

布美枝「人の家の郵便受けを!」

高村「いや これは…。」

布美枝「あ あなた 前にも 家の様子を 探っとったでしょ。 何なんですか? 警察呼びますよ!」

茂「おい どげした?」

布美枝「この人 うちの 郵便受けを のぞいとったんです。」

茂「え?」

内山「おい 何をやってるんだ。」

高村「すいません。 間が悪くて。」

内山「(舌打ち)すいませんねえ 奥さん。 ちょっと 調べさせて もらいましたよ。」

茂「何ですか あんたらは。」

内山「こういうもんです。」

2人「警察…?」

玄関

内山「地域住民から 通報がありましてね。 おかしな看板が出てるが 危険な政治団体じゃないのかって。」

布美枝「政治団体?」

高村「怪しい思想集団か。」

茂「待って下さい。 そんなもんじゃありません。」

内山「市民からの通報は ほうっては おけないんでねえ。 今のところ 不審人物の 出入りは ないようですが…。」

茂「当たり前です!」

高村「しかし 近頃 妙に郵便物が多くないか?」

布美枝「ずっと探っとったんですか?!」

茂「プライバシーの侵害ですよ!」

内山「まあまあ。」

茂「これは 全部 読者からの手紙です。 『少年戦記の会』というのは 俺が描いとる漫画のファンクラブです。」

内山「適当な事 言ったらいかんぞ。」

茂「えっ…。」

高村「他に目的が あるんだろ? たかが漫画に ファンクラブだの 『戦記の会』だのと 大げさじゃないか。」

茂「たかが? 今 『たかが』と 言いましたか?!」

高村「ああ。」

茂「たかがとは何だ! 俺は 漫画を描いて 飯を食っとるんだ!」

高村「本当に描いてんのかなあ。」

茂「俺は右利きだっ! 漫画は右腕で描く!」

内山「念のために ちょっと 中を 改めさせて もらいますよ。」

茂「断る!」

高村「何か 後ろ暗い事でも あるのか!」

茂「無礼な事を言うな!」

布美枝「これです! これを 描いとるんです!」

布美枝「どうぞ。」

茂「これが会報です。 ちょうど 2号目が出来たとこで。」

内山「村井さん どっちの方に 行っておられたんですかな?」

茂「え?」

内山「これを見れば分かります。 あなた 戦地 行っておられたでしょう。」

茂「ええ。 南方です。 ラバウルに。」

内山「すると その腕は 戦地で?」

茂「…はい。」

内山「私は サイパンの陸軍部隊に おりましてねえ。 まったく こんなふうでしたよ。」

内山「おい 行くぞ。」

高村「えっ いいんですか?」

内山「漫画のファンクラブなら 別に 問題ないだろう。」

高村「しかし…。」

内山「いや もう いいんだ。 お仕事中 お邪魔しました。」

茂「はあ。 ご苦労さまでした。」

内山「しかし あの 人騒がせな看板だけは 頂けませんなあ。」

2人「はい…。」

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