連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第3話「ふるさとは安来」

神社

チヨ子「お賽銭入れんと 願いは かなわんぞよ。」

布美枝「うわっ! な~んだ チヨちゃんか。」

チヨ子「何を拝んどったの?」

布美枝「背が高くならんようにって。」

チヨ子「何で?」

布美枝「お嫁に行けんと困るけん。」

チヨ子「心配症だなあ。」

(太鼓の音)」

布美枝「あ 盆踊りの稽古 始まっちょ!」

チヨ子「先の心配より 盆踊りの作戦 立てないといけん。 子供踊りの1等 賞品は ラムネだけん!」

布美枝「ラムネ?」

チヨ子「絶対に 1等 取ろうな!」

布美枝「うん!」

(太鼓の音)

布美枝「ユキ姉ちゃん? ユキ姉ちゃん!」

ユキエ「あっ! 布美枝。」

布美枝「どげしたの? 裁縫の先生のうち あっちだが?」

ユキエ「え~っと…。 あんたに構ってる暇ないわ。 バスの時間だけん。」

布美枝「バス? バスで どこ行くの?」

ユキエ「なあ お父さんには 内緒にしといて。 頼んだけんね。 約束だよ!」

チヨ子「あれは あいびきだが。」

布美枝「えっ?」

チヨ子「きっと 町で 映画見るんだよ。」

布美枝「映画なら そこの芝居小屋でも かかっちょ~のに?」

チヨ子「あいびきだもん もっと しゃれたとこ行くわ。 映画の後は コーヒーだね。」

布美枝「コーヒー? そげなもん 飲んだ事ねわ。」

チヨ子「お姉ちゃん 別嬪だけん コーヒー ごちそうしてもらえるんだわ。 うちのお母ちゃん 言っちょった。 ユキエちゃんは ええとこに お嫁に行くだろうねって。」

布美枝「私 もう一遍 拝んでくるけんね。 大きくなったら ユキ姉ちゃん みたいな 美人になりますように。」

飯田呉服店

登志「ほな ちょっこし 買い物に 行ってくるけん。」

源兵衛「ああ。」

登志「ああ。 そげだ。 お前 また別の商売 始める気か?」

源兵衛「昔の仲間が 軍に納める刀の会社に 誘ってくれちょうけん 考えちょ~とこだわ。」

登志「やめ~だ。 今までも 炭焼きやら荒物屋やら あれこれやって 痛い目にあっとるでねか。」

源兵衛「売る反物が入ってこんだけん もう 呉服屋では どうにもならんわ。」

登志「つまらん事に手ぇ出して この店 つぶしたら ご先祖様の罰が当たるわ。 横暴 言って!」

源兵衛「分かっちょらんな。 こげなご時世 何でもやらんと食っていけんわ。(ため息)」

神社

布美枝 チヨ子「♬『そろたそろだよ 踊り子が そろた こらせ』」

布美枝「うん。 息ぴったり!」

チヨ子「でも 1等狙うには 何か目立つ工夫せんとな。」

布美枝「工夫かあ…。」

ヒロシ「電信柱が 踊り踊っちょ!」

(子供達の笑い声)

チヨ子「ヒロシだ。 嫌な奴が来た。」

<ヒロシは この辺りのガキ大将です>

ヒロシ「お前やちゃ のけ! ここは 俺らの場所だけん。」

一同「そげだ! 女は邪魔じゃ。」

チヨ子「何だね。 今 来たくせに。」

「うるせえ! 生意気じゃ。」

ヒロシ「だらず 場所取りしてあるわ。 俺らの刀だ。」

一同「そげだ そげだ!」

ヒロシ「電信柱は その辺に突っ立っとれ。」

(子供達の笑い声)

ヒロシ「1等は 俺らが もらう!」

一同「わ~い。」

一同「♬『そろたそろたよ 踊り子が そろた』」

チヨ子「何だね あれ。 下手くそな踊り。 フミちゃんが 踊り上手だけん 邪魔するんだわ。 相手にせんで 大神宮さんで 稽古しよう。」

布美枝「なあ 電信柱って 私の事?」

チヨ子「のっぽだけんね。 うんと目立つ工夫 考えて 1等 取って あいつら見返してやろうや。」

布美枝「目立つ事 したくないわ。」

チヨ子「何で? 1等 取れんよ。」

布美枝「取れんでもええ。 目立ったら また からかわれるけん。」

チヨ子「賞品 ラムネだよ。」

布美枝「ラムネ いらん…。」

チヨ子「ヒロシ達に負けるの 悔しくねかね? フミちゃん 一緒に頑張ろうよ!」

布美枝「私 今年は踊らん事にする…。」

チヨ子「え~っ?!」

<背の高さを気にする布美枝は 持ち前の内気さに 拍車が かかっていました>

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