連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第53話「私、働きます」

道中

茂「はあ~ 今日も 玉砕か…。 はあ~。 いや 電車賃かけて出てきたんだ。 そう簡単には 退却できん。」

富田「このまま 帰れんな。」

茂「はあ~ 腹へったなあ。」

富田「あったかい そばでも 食いたいなあ。」

茂「しかし 売れんなあ。」

富田「何で もうからないんだよ!」

茂「描いても 描いても 本を出せんのでは 一銭にもならん。」

富田「売る本がないんでは どうにもならんだろ?」

茂「出版関係の方ですか?」

富田「え?」

茂「いや~ 4月なのに 冷えますな。」

富田「水木さん?!」

茂「え?」

富田「水木さんじゃないの?! ハハハ! いや~ 久しぶりだな!」

茂「あ!」

富田「私だよ 私!」

茂「富田?! しばらく見ない間に すっかり くたびれて。 髪も薄くなっちょ~な!」

富田「あらら! いや~ 会いたかった! 会いたかった! ハハハ!」

茂「ん!」

富田「えっ?」

茂「あんたとは 国交断絶しておる!」

富田「そんな 冷たい事 言うなよ! ここで こうして会えるなんて あんたと私は 共存共栄の 強~い絆で 結ばれとる!」

<原稿料の不払いが原因で つきあいを断っていた富田との 半年ぶりの再会でした。 果たして これは 吉と出るか 凶と出るか…>

富田書房

富田「どうぞ 入ってちょうだい。」

茂「はあ~! 荒涼としとる。」

富田「水木さん このとおり! 悪かった! あんたには 迷惑をかけて。 目先の欲に走って 事業拡大を 目指したのが いけなかった。 不肖 富田 遅まきながら その事に 気が付きました。 水木さん また 戻ってきてよ。 また うちで 本 出してよ。」

茂「そういえば 『売りたくても 売る本がない』ような事 言っとったですな。」

富田「実は…。 本が出せない。」

茂「え?」

富田「自転車操業でも 次々に 本を出していかないと 回らない商売なのに 肝心の 描いてくれる人が誰もいないんだ。」

茂「あんた よそでも 随分 不義理をしとったでしょう。」

富田「面目ない。」

茂「あんたに 問題があるんですぞ。」

富田「おっしゃるとおり。 すべて 私の不徳の致すところです。 ところで この見慣れた袋!」

茂「え? いやいや…。」

富田「あれ? ちょっと 漫画の原稿 入ってるんじゃないの?」

茂「いや これは…。」

富田「三海社の社長 病気になったんで 会社 つぶれちゃったでしょう?」

茂「それは…。」

富田「さっき ボロッと言ってなかった?」

回想

茂「描いても 描いても 本が出せんのでは 一銭にもならん。」

回想終了

富田「その漫画 うちで出させてもらえないかな?」

茂「冗談じゃない! あんたとは もう仕事はせん!」

富田「じゃあ まず ちょっと 見るだけ。」

茂「いや…。」

<ちょうど その頃…>

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