連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第53話「私、働きます」

水木家

居間

はるこ「うわ~ 本になってる。 あ! ここ 私がペン入れしたとこですよ。」

布美枝「どれどれ。」

はるこ「ここ。 うわ~ 印刷されてる。」

布美枝「うちの人 もうすぐ 戻ってくると思うんですけど。」

はるこ「いいんです。 近況をお伝えしに 寄っただけですから。」

布美枝「あれから どうしておられたんですか? 実家には 戻られたの?」

はるこ「とんでもない。 田舎になんて 戻りませんよ。 こっちで働き口 見つけたんです。 パチンコ屋の住み込みの店員。」

布美枝「パチンコ屋さん?」

はるこ「はい。 今 すごい人気なんですよ パチンコ 朝から晩まで チンジャラ チンジャラ。 景気のいいったらないんですから。」

布美枝「へえ~ そう?」

はるこ「お給料もらえるし 狭いけど 住むとこあるし 言う事なしです。」

布美枝「漫画の方は?」

はるこ「もちろん 描いてます。 夜 仕事の後に描いて 休みの日に 持ち込みに回るんです。 」

布美枝「うまくいきました?」

はるこ「さっぱり。 漫画雑誌 出してる会社 あちこち回ったんですけど 『絵が下手だ 話にひねりがない 個性が足りない』って こてんぱんに 言われちゃいました。」

布美枝「まあ 女の人に そんな ひどい事を。」

春子「会ってくれるのは まだ いい方。 門前払いされたり さんざんですよ。」

布美枝「そげですか。 やっぱり 雑誌で描くのは 大変なんですね。」

はるこ「でも 大変な方が やりがいがありますから。 次は 貸本漫画の会社 回ってみます。」

布美枝「貸本も 厳しいですよ。 お金がないですけん 食べていくには 大変。」

はるこ「平気です。 パチンコの住み込み 続けながら 描きますから。 ここで頑張らないと 田舎から 出てきた かいがありませんから。」

布美枝「偉いなあ!」

はるこ「そうですか?」

布美枝「うん。 昼は働いて 夜は 漫画 描いて 休日は 出版社 回って…。 私なんか とっても まねできん。」

はるこ「好きな事してるだけです。 私 漫画家になりたくて 家 出てきたんですから。 漫画のためなら 頑張れます。 私も早く 自分の本 出したいなあ。」

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