布美枝「不動産屋さんに出かけとります。 家の月賦の事で呼ばれて。 ああ 何だろう 急に…。」
はるこ「じゃあ これ 先生に 渡しておいて下さい。」
布美枝「あっ! はるこさんの本? また 新しいの出たんですか?」
はるこ「はい。」
布美枝「もう 5冊目?」
はるこ「お陰さまで 次の注文も頂きました。」
布美枝「すごいなあ。 貸本漫画は 景気が悪いっていうのに。」
はるこ「少女漫画は まだ いい方みたいで。 でも これでいいのかな? 悲劇のバレリーナとか 出生の秘密とか 私 どっかで見た事あるような 漫画ばっかり描いてるんです。 自分にしか描けない漫画って 何なんだろう…。 私 水木先生が 理想なんです。」
布美枝「うちの人が?」
はるこ「はい! 先生の漫画って とっても独創的でしょ。 私も 先生みたいに 個性的な漫画家になりたくて。」
布美枝「個性的は ええですけど 貧乏しますよ。」
はるこ「あ… そうですね。」
布美枝「私は 漫画の事は よう分かりません。 うちの人が戻ってきたら 相談してみて下さい。」
はるこ「はい。 あっ でも 私 そろそろ行かないと。 これから 仕事の打ち合わせなんです。 浦木さんと。」
布美枝「そう 仕事の。 ん? 浦木さんて… あの?」
はるこ「はい。 先生のお友達の浦木さん。」
布美枝「ああ。」
はるこ「前に こちらで一度 お目にかかったでしょう。 あれから 時々 お仕事をくれるんです。 小さな挿絵や何か。 ちょっとした お仕事ですけど。」
布美枝「あら まあ。」
純喫茶・再会
浦木「そろそろ 來る頃かな? あ~ ちょっと。 それそれ それ出して。 そうそうそう。 こう。 う~ん。 はい。」
亀田「誰? あの人。」
マスター「さあ。 もう1時間も 立ったり 座ったり そわそわしてんですよ。」
亀田「へえ~。 あっ 臭い!」
はるこ「すいません。 お待たせしました?」
浦木「いえ 僕も 今 来たところです。」