神社
信夫「見合いの日取りも決まらんのに ずうずうしいかも しれんけど 卵やら芋やら ちっとばかし 持ってきたんだわ。 みんな うちの畑で採れたもんだけん。 あ いや 食べ物で 気を引こうとは思っとらんよ。 ま ちっとは その気もあるかな。」
布美枝「姉は おらんです。」
信夫「どっかに お出かけかね?」
布美枝「ず~っと 出とります。」
信夫「いつ 戻られるかね?」
布美枝「分かりません。 あの…。」
信夫「ん?」
布美枝「見合い やめて下さい! 姉との見合い 諦めて下さい うちにも 來んで下さい。 頼みますけん このまま 帰って下さい。」
信夫「なして そげな事 わ~に 言われにゃならん? 大体 子供が 口を出す話では なかろうが。」
布美枝「けど 困るんです。 このまま 姉ちゃんが帰ってこんかったら。」
信夫「どういう事だ?」
布美枝「ほんとに困るんです。 うちの中 ずっと お通夜みたいだし。 私がいらん事したけん こげな事になって どげしたらええか分からん。」
<その夜 仲人さんが 横山家が 見合いを断ってきた事を 伝えにきました>
飯田家
登志「早こと 安来に知らすとええわ。」
ミヤコ「はい。」
登志「これで ユキエも戻ってくるだろう。」
ミヤコ「でも おかしな話ですわ。 急に 断り言ってくるなんて。 この間も 話 進めてくれと 催促があったんですよ。」
登志「他に ええのが見つかって 乗り換えたんだろう。」
ミヤコ「はあ。」
登志「とんだ だらず男かもしれんな? 嫁に出す前に分かって かえってよかったが。」
ミヤコ「そげですね。」
源兵衛「もうええ! 済んだ事 ぐだぐだ言うな! わしの見込み違いだったか。」
<縁談は 横山が 一方的に 断った事になっていまし。 布美枝が頼んだ事を 横山は 言わずにいてくれたのです>
布美枝「よかったんだよね? これで。 姉ちゃんが戻ってくるんだけん うちが 元どおりになるんだけん よかったんだよね?」
<けれど 横山の 優しそうな笑顔を思い出すと 布美枝は 胸が痛くなるのでした>