布美枝「よいしょ。 はい…。 すごいですねえ!」
茂「ん?」
布美枝「女の人が 名刺持って 挨拶するところ 私 初めて見ました。」
茂「ああ 確かに珍しいな。」
布美枝「丸の内で 重役秘書か…。」
茂「深沢さんは 慌てもんだけん ああいう人が そばにおったら こっちも安心だな。」
布美枝「けど よかったですね。 すっかり 元気になられて。」
茂「ああ。 生きるか死ぬかの療養中に 会社作ったり 雑誌の創刊したり あの人 不死身かな?」
布美枝「原稿料も頂けて お陰で 一息つけますね。」
茂「うん。 これで イカルの上京も 阻止できるなあ。」
布美枝「え?」
茂「お前 この金で 藍子と2人 安来に 里帰りしてきたらええ。」
布美枝「これは 生活費の足しにせんと…。」
茂「ええけん 行ってこい。」
布美枝「ほんなら まず 境港に行って…。」
茂「いや そっちは ついでに ちょっこし 顔出せば ええわ。」
布美枝「お父ちゃんは?」
茂「いや 俺は 行けんよ。 戌井さんとこの仕事もあるし 『忍術秘帖』にも取りかからんとな。」
布美枝「けど 私と藍子だけで 行く訳には…。」
茂「ええけん。 せっかくだ。 ゆっくりしてこい。」
布美枝「だんだん…。」
茂「うん。(おならの音) おっ ええ音色だ。 狸囃子の笛の音と 言ったところかなあ。」
布美枝「結構な音色でした!」
茂「うん フフフッ。 『忍法屁力(へぢから)』というのは どげだろう?」
布美枝「何ですか?」
茂「強烈な屁で 敵を倒していく 忍者の話だ。」
布美枝「はあ…。」
茂「何の取り柄もない男が 強力な屁を武器に 一撃必殺で倒していく…。」
布美枝「それ 忍法ですか?」
茂「うん。 屁には まだまだ 想像を超えた 未知の力が あるかもしれん。」
布美枝「面白いですね。」
茂「うん そげだろう。 うん…。」
<深沢の復活は 貧しい暮らしに 久々に差し込んできた 明るい希望の光でした>