水木家
居間
茂「『幻の沼』か…。」
太一「実家の綾織から 小友に抜ける峠に 不思議な沼があるって 死んだ ばあちゃんが 話してくれた事があるんです。」
茂「『不思議な沼』?」
太一「いつもは ないのに 時たま現れる沼で そこには 海の魚も 川も魚も みんな 住んでるそうなんです。」
茂「ほう それは ええな。 いろんな魚が 一遍に釣れて。 食うものには困らん。」
太一「ところが その沼を見た人は 必ず病気にかかって 死んでしまうといわれていて…。」
布美枝「あ 怖っ!」
茂「うん。 昔から伝わっとる話は やっぱり どこか 恐ろしいところがあるな。」
太一「はい。 けど 恐ろしいから面白いんです。 先生の漫画と一緒で。 俺… どこに行っても 先生の漫画 ずっと 読み続けますから。」
茂「うん。」
布美枝「支度できました。 晩ご飯にしましょう。」
太一「あっ! 運ぶの手伝います。 それ 持ってっていいですか?」
布美枝「お願いします。」
<太一は いつの間にか すっかり たくましくなって 自分の道を 歩き始めていました>
布美枝「美智子さん 太一君 しっかり やってますよ。」
仕事部屋
布美枝「お父ちゃん お茶はいっとるよ。」
回想
はるこ「漫画 描いてる人間の気持ち 布美枝さんに分かるんですか? 布美枝さんは 先生のそばにいて 見てるだけじゃないですか。」
回想終了
布美枝「見てるだけか…。 (ため息) それしか できんもんなあ 私…。」
<はるこに言われた言葉が 布美枝の心に トゲのように刺さっていました>