連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第87話「チャンス到来!?」

豊川「う~ん。 何年 描いてるの? 貸本漫画。」

はるこ「3年です。」

豊川「結構 数 描いたでしょう?」

はるこ「はい。 原稿料が安いから たくさん 描かないと やっていけなくて。」

小村「ハハハ… 正直だなあ。」

豊川「無難に まとめてるけど… もっと ザラッとしてないとね…。」

はるこ「はあ… ザラッと?」

小村「つまり もうちょっと 個性が欲しいって事。 特に 後半の展開だね。」

はるこ「はい…。」

小村「でも 絵の技術はあるよ。 背景とか 達者だし。」

はるこ「ありがとうございます。」

小村「後半 描き直して もう1回 持っていらっしゃい。」

はるこ「はい! すぐ やり直します。 いつ お持ちしましょう?」

小村「何日で直せる?」

はるこ「3日で やります!」

廊下

はるこ「やった! 脈あり。 チャンス到来! 絶対 ものにしなきゃ。」

少女ガーデン編集部

豊川「さっきの子 雑誌で売るのは 無理だと思うけど。 変に 期待 持たせると かわいそうだぞ。 あれ さっきの子 忘れてったな…。」

小村「一本立ちは 無理だろうけど 森川先生とこの アシスタントに どうかと思ってさ。 あの先生 厳しいじゃない。 だから なかなか 長続きする奴がいなくてさ。 根性はありそうじゃない 彼女。」

はるこ「あの… すいません。 手帖 落ちてなかったですか? あ それです。」

豊川「ああ。 はい。」

はるこ「ありがとうございます。 それでは また 3日後に伺います。」

<膨らんだ雑誌デビューの希望は 瞬く間に しぼんでしまったのでした>

深大寺

店員「はい。 お待ちどおさまでした。 どうぞ ごゆっくり。」

修平「うん うまい!」

絹代「そば いただいた後に よう そげに頼みますね。」

修平「どれも うまそうで 捨てがたい。」

布美枝「これが 『イトツ』って事か…。」

絹代「え?」

布美枝「あ すんません。」

絹代「芝居 見に行っても パクパク むしゃむしゃ。 周りの人が びっくりしとったわ。」

修平「菓子 弁当 すしは 昔から 芝居には つきものだ。」

絹代「ここは ええとこねえ。」

布美枝「はい。」

修平「あ~ ええとこだ。 そばは うまい だんごも うまい。 フフフ…。」

絹代「食べ物の話ばっかり…。」

水木家

仕事部屋

はるこ「あの… 先生。」

茂「おう お帰り。」

はるこ「水木先生!」

茂「え? お~ あんたか…。」

はるこ「玄関で 何度か 声かけたんですけど…。」

茂「何か 用ですか?」

はるこ「布美枝さんは?」

茂「今 出かけとる。」

はるこ「私… この間 布美枝さんに 悪い事 言ってしまったので おわびに あがったんですけど…。」

茂「じき 戻ってくるけん 茶でも飲んで 待っとったらええ。」

はるこ「いえ… じゃあ 出直してきます。」

茂「ああ。」

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