<布美枝は とんでもないところに 帰ってきてしまったのです>
絹代「さっきの人と何があったか はっきり説明しなさい!」
修平「まあまあ そげに せかさんでも 今 茂が説明しちょ~だけん。」
茂「だけん あの人は 貸本漫画家で 漫画の事で 悩んどったんだ。 つまりだな 3年の期限付きで 東京で 漫画を描いとって その期限が迫っとる。 このままだと 漫画を諦めて 田舎に帰る事になるけん。 それが悲しくて 泣いとったんだ!」
布美枝「ほんなら はるこさん 漫画を やめるんですか?」
茂「今月いっぱいで 期限が切れるそうだ。」
布美枝「『時間がない』って 言っとられたのは その事だったんですね?」
茂「うん。」
絹代「ほんとに やましい事は ないんだね?」
茂「何もない。」
絹代「布美枝さんも 知っとる人なのね?」
布美枝「はい。 そげな事情なら 泣いて おられるのも 無理ないです。」
絹代「ほんなら 何も 騒ぐ事ないわね。 人騒がせな。」
茂「そっちが 勝手に勘違いしたんだろう…。」
絹代「ああ バカらしい。 もう こげな話は やめて 早こと 夕飯にしましょう。」
布美枝「はい。」
修平「けどな…。」
絹代「何ですか? 若い娘が 男の胸にすがって 泣くというのは ただごとではないぞ! あの娘 やっぱり 茂の事 憎からず思っている。」
絹代「お父さん! 今 終わった話を なして 蒸し返すんですかっ!」
修平「(せきばらい)」
回想
布美枝「これ この間の写真。」
はるこ「別に 深い意味はないんです…。」
回想終了
布美枝「なして あの写真… 大切に 持っとられたんだろう…。」