茂「あんたの漫画家魂も いつかは 何かに繋がるかもしれんよ。 でもなあ… うちのおやじの話では 手本にも 参考にもならんな。」
布美枝「あら そげですか? お父さん 立派じゃないですか。 今でも 小説 書いておられるんですけん。」
はるこ「今でも?」
布美枝「はい。 この間も 出版の相談で 上京されたんですよ。 まあ 結局 本には なりませんでしたけど。」
茂「あの人は 昔から 『なんとかなる主義』で やっとるけんな。」
はるこ「なんとかなる主義…?」
布美枝「あら… けど それ お父ちゃんも 受け継いどりますよ。」
茂「俺がか? ああ 俺も たま~に言っとるな 『なんとかなる』。」
布美枝「いいえ よう言っとります。」
はるこ「何だか 私 がぜん ファイトが わいてきました。 『なんとかなる』か そうですね! フフッ…。」
<久しぶりにみせた はるこらしい明るい笑顔でした>
玄関前
布美枝「お元気で。」
はるこ「はい。 先生 布美枝さんを お借りしてもいいですか?」
布美枝「え?」
はるこ「私 一度も 行った事がないんです 深大寺。 だから 東京を離れる前に どうしても行ってみたくて。 布美枝さん つきあって下さい!」
布美枝「今からですか?」
はるこ「先生 いいですか?」
茂「ああ ええぞ。」
はるこ「行きましょう!」
布美枝「あっ けど 藍子が…。」
茂「俺が見とってやる。」
布美枝「あ…。」
はるこ「行きましょ。」
茂「おい! 自転車で行け 自転車で。」