連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」第88話「チャンス到来!?」

2階

布美枝「はあ… 枕 これしかないなあ。」

絹代「う~ん もう 構わんでねえ。 毛布一枚あったら 私は どこでも寝られるけん。」

布美枝「すんません。 そういえば お父さんの小説を出版する話 どげなりました?」

絹代「やっぱり詐欺だわ! お父さんが しつこく言うけん おととい 昔の知り合いいう人に 会ってきたけど まあ うさんくさい! 浦木さんと よう似てとった。」

布美枝「ああ…。」

絹代「私は 初めっから 分かっとったよ。 素人の小説 30枚ばかり読んで感心するもんは おらんわね。 お父さんも どうせ 最後まで書かずに ほうり出してしまうだろうし。」

布美枝「そげですか。」

絹代「でも ええ機会だと思って。 孫の顔も見たいし こういう事でもないと なかなか上京できんけん。」

布美枝「はい。」

絹代「お父さんが刺激 受けた 三浦綾子という人ね 『氷点』書いた。」

布美枝「ああ… はい。」

絹代「茂と同い年らしいわ。 それも 脊椎カリエスで 長い事 寝たきりだったとね。」

布美枝「はあ…。」

絹代「諦めずに書いた小説が 大当たりして 一躍 人気作家だが。 ハハハ…。 40過ぎて 日の当たる事も あ~だけん。 茂も まだまだ 諦める事は ないわ!」

布美枝「…はい。」

絹代「けど…。 貧乏暮らしのままで 終わるかもしれんよ。」

布美枝「え?」

絹代「ずっと… 売れない漫画家の ままかもしれん。 それでも そばにおってやってね? 苦労かけるかもしれんけど… あんたは女房だけん。 一緒に やっていって ごしなさいね!」

布美枝「お母さん…。」

絹代「どうぞ… お願いします!」

布美枝「はい…!」

絹代「あら?」

藍子「どうぞ お願いします。」

絹代「あっ…。 ハハハハハ!」

布美枝「藍子…!」

絹代「藍子! はい おいで… ハハハ! お利口さん!」

仕事部屋

修平「おい まだ寝んのか?」

茂「ああ 先に寝とってくれ。」

修平「うむ。」

茂「どげなった? 本 出す話。」

修平「相談してる横から 母さんが ゴチャゴチャ 口出すけん 破断になったわ。 『信用できん』とか 『売る気がない』とか 余計な事ばっかり言う!」

茂「ハハハ 残念だったな。」

修平「ベストセラーになったかもしれんのに。 母さんは 芸術を解さん女だけんな。 わしが 昔 映画館を始めた時も 最後まで 反対しとった。」

茂「あ~ そういえば やっとったな 映画館。 俺が子供の頃 あれ もうかっとったのか?」

修平「わしは 地域の文化芸術発展のために やっとったんだ。 金もうけのためだねわ!」

茂「ふ~ん…。

(修平の笑い声)

修平「お前の漫画 なかなか面白いな。 子供の頃から 絵ばっかり描いとったが とうとう それが 一生の仕事になったか。」

茂「まあ あんまり稼げんがな。」

修平「金を追っかける人生なんぞ つまらん。 好きな事を追っかけて 生きる方が ええ。 後は まあ… なんとかなるだろう。」

茂「うん…。」

修平「ところで 茂。 わしには 本当の事を聞かしぇ。」

茂「な 何だ?」

修平「昼間の娘 あれ 年 幾つだ?」

茂「あん?」

修平「美人だったなあ。 お前 何か あったんだろう?」

茂「何もないわ!」

修平「何だ もったいない!」

茂「えっ?」

修平「いやいや…。」

(笑い声)

修平「おいおい 仕事しぇ わしゃ もう寝る!」

茂「ああ。」

2階

(絹代の高いびき)

<翌日 修平と絹代は 境港に帰っていき…。 調布の家に いつもの暮らしが 戻ってきました>

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