連続テレビ小説「花子とアン」第116回「海にかかる虹」【第20週】

(戸が開く音)

醍醐「ごめんください。」

平祐「あれ? 今度は誰だ?」

書斎

花子「てっ… 醍醐さん びっくりした。」

醍醐「ごきげんよう。 かよさんから はなさんがすごく忙しいって 聞いたから お手伝いに来たの。」

花子「ああ… ありがとう。」

醍醐「歩ちゃんと遊ぼうと思ったら 吉太郎さんと夢中で何かを作ってて。」

花子「ああ… 兄やん 歩と妙に馬が合うらしいの。」

醍醐「吉太郎さんって 見かけによらず 子ども好きなのね。 あっ お邪魔しないわ。 お仕事続けて。」

花子「ええ。」

居間

吉太郎「歩のおかあは 歩くれえの頃っから 三度の飯よりも 本が大好きだっただ。」

歩「ふ~ん。」

吉太郎「歩は 仕事なんかしなんで 一緒に遊んでくれるおかあの方が よかったけ。 誰にも言いつけんから 本当の事言っていいだぞ。」

歩「僕がお母ちゃまを見つけたんだ。」

吉太郎「えっ?」

歩「神様と雲の上から見てたんだ。 そしたら お母ちゃまが見えたの。」

吉太郎「雲の上から?」

歩「うん。 お母ちゃま 英語のご本を読んだり 紙にお話を書いたり 忙しそうだったよ。 でも 楽しそうだった。 だから 神様に頼んだの。 『僕は あの女の人のところに 行きたいです』って。」

吉太郎「ふ~ん。」

歩「だけど 今日は 頭に来ちゃったよ。」

吉太郎「本当に おかあと海に行きたかっただな。」

醍醐「今の歩ちゃんの話 どう思います?」

英治「歩は 花子に似て 想像の翼が大きいんです。」

醍醐「私は 信じますわ。 すてきなお話ですもの。 お昼にしませんか? お弁当 持ってきたんです。」

英治「う~ん。」

平祐「こりゃ うまい。」

醍醐「本当ですか?」

英治「すごいですね 醍醐さん。」

醍醐「ありがとうございます。」

平祐「ありがとう。」

花子「てっ! これ 醍醐さんが作ったの?」

醍醐「ええ。 はなさんも召し上がれ。」

花子「あ… ありがとう! 頂きます。」

英治「どれも本当においしいです。」

醍醐「お口に合ってよかったです。」

花子「兄やんも 歩の機嫌直してくれて ありがとうね。」

吉太郎「いや。」

歩「お母ちゃま ここから 人の声が聞こえるよ。」

花子「すごい! これ どうしたの?」

英治「鉱石ラジオを 吉太郎さんが作ってくれたんだ。」

醍醐「ラジオを作ってしまうなんて 吉太郎さんって 機械にお強いんですね。」

吉太郎「いえ ごく簡単なものですから。」

歩「お母ちゃまも聴いて!」

ラジオ『ニュースであります。 こちらは JOAK…』。

花子「てっ! 本当に人の声が聞こえる。 一体 どこから話してるのかしら?」

歩「ずっと遠くだよ!」

花子「へえ~ ずっと遠く。」

吉太郎「歩。 おかあに言う事あるずら。」

歩「うん。 お母ちゃま 大切なご本に お絵描きして ごめんなさい。」

花子「歩ちゃん…。 お母ちゃまも 約束破って ごめんなさい。 今やってる仕事が終わったら 今度こそ 絶対に絶対に 海に行こうね。」

歩「うん! お母ちゃま!」

花子「歩ちゃんは お母ちゃまのダーリングボーイ。」

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