村岡家
書斎
吉平「はな… 大丈夫け?」
花子「うん…。」
居間
(セミの声)
<翌日 蓮子は 再び 花子のもとを訪れました。>
蓮子「はなちゃん…。 こんな事しかできなくて ごめんなさい…。」
花子「蓮様…。 蓮様…。 ありがとう…。」
蓮子『あすよりの 淋しき胸を 思ひやる 心に悲し 夜の雨の音』。 『母と子が 並びし床の 空しきを 思いやるなり われも人の親』。 『われにさへ けさは冷たき 秋の風 子をうしなひし 君がところ』。
書斎
<蓮子から贈られた歌の数々が 花子を仕事に向かわせました。>
仏間
吉太郎「はな どうしてますか?」
英治「書斎に籠もって 仕事をしています。」
吉太郎「仕事?」
書斎
吉太郎「はな…。」
花子「あっ… 兄やん 来てただけ。」
吉太郎「もう 仕事なんしてるだか…。」
花子「翻訳の締め切り 過ぎちまって 急がんきゃ。」
吉太郎「歩が死んだばっかだに よく 仕事なんできるじゃんけ! これ 持ってくぞ。」
(時計の音)