<はなの天敵の白鳥かをる子様です。 卒業後は 職員として学校に残り 今も このとおり 幅を利かせていらっしゃいます。」
白鳥「安東はなさん。」
はな「はい。」
白鳥「お父様が面会室でお待ちです。」
はな「てっ!」
白鳥「『てっ』?」
はな「いえ… ありがとうございます。 失礼致します。」
茂木「廊下は 静かに歩きなさい。」
はな「はい。」
面会室
はな「おとう!」
吉平「グッド アフタヌーン。 はな。」
はな「グッド アフタヌーン。 お父様。」
吉平「『お父様』! 元気そうじゃな。」
はな「はい。 おとう 今度は どこに行ってたの?」
吉平「うん。 東北の方を あちこちな。 あっ ほういえば 寮母の茂木先生から聞いたぞ。 英語の成績 学校で一番だそうじゃな。」
はな「うん。 英語だけは。 ふんだけんど 数学やお裁縫は 苦手で…。」
吉平「一番なんて すげえじゃんか! やっぱし おとうの見込んだとおりじゃ。 はなは うちの一家の希望の光じゃ。 はな 今度の冬休みは 甲府に帰れ。 みんな はなに会いたがってるだぞ。」
はな「だけんど…。」
吉平「金のこんは 心配するな。 汽車賃ぐらい おとうが なんとかするから。」
はな「やっぱり いい。」
吉平「どういで?」
はな「そのお金で おじぃやんや おかあや みんなに 腹いっぺえ おいしいもん 食べてもらって。 おとう。 寄宿舎のお正月も悪くないのよ。 誰もいないから 図書室は借り切りで 毎年 本を好きなだけ読むの。」
吉平「はな…。」
<はなの そんな強がりを おとうも よ~く分かっておりました。>
はな「みんなに会いてえなあ…。 はあ…。」
<日曜日がやって来ました。 はなたちは 毎週 孤児院に出向き 恵まれない子どもたちのために 奉仕活動を行います。 それにしても お嬢様たち 随分と気合いが入っております。>
孤児院
♬~(讃美歌)
<礼拝のあとは いよいよ 待ちに待った日曜学校。 ミッションスクールの生徒にとっては 異性と知り合う唯一のチャンスです。>
はな「かごめかごめ? いいよ! 鬼やりたい人!」
子どもたち「はい! はい! じゃあ なっちゃん!」
一同♬『かごめ かごめ』
醍醐「あの背の高い岩田様 おうちは 財閥で大富豪ですのよ。 その隣の北澤様は 金沢の由緒あるお家柄で 帝大一の秀才なんですって。 おまけに あのとおり 眉目秀麗。」
♬『うしろの しょうめん だーれ』
「だ~れだ?」
「はなおねえさん!」
はな「はなじゃなくて 花子おねえさんでしょ!」
「はなは はなだ! 逃げろ~!」
子どもたち「逃げろ~!」
はな「あっ! あっ! 待て! 待て 待て!」