安東家
庭
朝市『今度のお正月も 甲府に帰れませんが どうか皆様 お体を大切に よいお年をお迎え下さい。 ごきげんよう。 Thank you. 花子』。
ふじ「朝市 いつも ありがとね。」
朝市「はな もう すっかり 東京言葉になっちまったですね。」
リン「お母様だなんて… てっ よその人みてえじゃんね。」
周造「そうさな。 もう5年も ここにゃあ帰ってこんだからな。」
リン「ほうか… 5年け。」
ふじ「朝市。」
朝市「ん?」
ふじ「おらに 字を教えてくれんけ。 いつか はなに 自分で 便りを書えてみてえだけんど 今っ更 字を覚えようなんて 無理ずらかね?」
朝市「ほんなこん ねえら。 一緒に頑張るじゃんけ!」
リン「朝市! 早く 畑行かざあ。 土寄せが終わらんら。」
朝市「おかあ 今行くずら。」
<はなに負けないくらい 勉強が好きだった朝市は 上の学校へは進まず お百姓さんになりました。>
修和女学校
教室
富山「My hair is turning gray. 『私の髪は 灰色に変わってきました』。 That is a long story. 『それは 長い物語です』。」
はな「そうかな…。」
富山「安東さん。 質問があるなら おっしゃい。」
はな「私は 少し違う訳をしました。」
富山「言ってごらんなさい。 あなたの訳とやらを。」
はな「My hair is turning gray. 『私は 白髪が増えてきました』。 That is a long story. 『話せば長いのよ』。」
富山「つまり あなたは 私の訳が 間違ってると言いたいの?」
はな「いえ そういう訳では…。」
(どよめき)
富山「そんな砕けた訳は 私の授業では 認めません。 分かりましたね。」
廊下
醍醐「はなさんの訳の方が 自然で分かりやすかったわ。 自信を持って。」
2人「ええ そうよ。」
はな「ありがとう。」
醍醐「でも はなさん。 そんなに お勉強ばかりしていると 富山先生や白鳥様のように お嫁に行きそびれてしまうわよ。」
はな「えっ…。」
畠山「あっ うわさをすれば。」