連続テレビ小説「花子とアン」第149回「どんな朝でも美しい」【第25週】

翌朝

花子「兄やん?」

吉太郎「おとう。 おかあ。 おらを このうちに置いてくりょう。」

ふじ「てっ!」

吉太郎「おとう… ブドウ酒の造り方を 教えてくれちゃあ!」

吉平「よ~し。 分かった。」

吉太郎「ありがとうごいす…。 ありがとうごいす!」

ふじ「吉太郎…。 本当に… 本当にいいだけ?」

吉太郎「おかあ。 野良仕事は 久しぶりだから 足手まといかもしれんけんど 一生懸命やります。」

ふじ「ほうけ。 吉太郎。」

玄関

朝市「はな。 東京に戻るだけ?」

花子「ああ 朝市。 うん。 私だけ 一足先に帰るこんにしたの。」

朝市「ほうか。 おじさん… 吉太郎さんが ブドウ酒作り手伝ってくれるの よっぽど うれしいみてえじゃん。 えらく張り切って畑行った。」

花子「ほうなのよ。 おとう 大丈夫かな…。」

朝市「おじさん はなが また ラジオ出るのも う~んと楽しみにしてたじゃん。 はな… どうしたでえ?」

花子「私… ラジオに出て しゃべっていいのかどうか まだ迷ってるさ…。」

朝市「どうして?」

花子「蓮様の息子さんは 私のラジオを聞いてくれていたの。 その息子さん… 終戦の直前に戦死なさったの。」

朝市「ほうだっただけ…。」

花子「私のラジオを聞いて 戦地へ行った子どもは ほかにも 大勢いるわ。 毎日のように 『兵隊さんが こんなすばらしい活躍をした。 兵隊さんは 立派だ』って ラジオで 子どもたちに 言ってただもの…。」

朝市「ほれなら… おらだって同じじゃん。 お国のために命をささげる事は 立派な事だって 毎日毎日 生徒たちに教えてきた。 教え子も 大勢 戦死した。 申し訳なくて… 後悔しても しきれねえ。」

花子「朝市…。」

朝市「ふんだけんど 償っていくしかねえ。 自分のできる事を 一所懸命やって 償っていくしかないんじゃねえか。 はな。 はなが本当に話したかった話って 何でえ?」

花子「えっ?」

朝市「戦争中にできなんだ話は いっぺえあるはずだ。 ほれを話せばいいじゃん。 はなの『ごきげんよう』を 楽しみぃしてる子どもは 大勢いると思う。」

吉太郎「はな。 おらも ほう思う。」

花子「兄やん…。」

吉太郎「おとうも言ってたさ。 人生に無駄なこんは 一個もねえって。 早く行かんと 汽車に乗り遅れちもう。」

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