夜
吉太郎「ずっと ここで 百姓やってりゃ よかったのかな…。 おとうに精いっぱい逆らって このうち捨てて 憲兵になったけど…。」
回想
吉太郎「兵役が終わっても そのまま軍隊に残れるように 頑張ろうと思ってるです。」
周造「てっ。」
吉太郎「職業軍人を 目指すつもりでごいす!」
(拍手)
徳丸「吉太郎君! よく言った!」
吉太郎「おらは おとうみてえに フラフラ生きたりしねえ。」
回想終了
吉太郎「自分は正しいって 信じて やってきた。 だけど… 全てが 間違ってたような気がして…。」
吉平「吉太郎… おまん 死のうとしてるだけ。」
吉太郎「憲兵なんか ならなきゃ よかった…。 俺のしてきた事は 全部 無駄だった。」
吉平「ほりゃあ 違う。」
吉太郎「慰めは いらんです。 国は負けたのに 憲兵なんかしてたやつは 生きてる資格もないって 世間は みんな思ってます。 おとうも そう思ってるんでしょう?」
吉平「(ため息) ふざけるんじゃねえ。 俺は おまんに うちの仕事をさして 上の学校にも 行かしてやれなんだこん ず~っと悔やんできた。 ふんだけんど おまんは 自分の人生を 一っから 自分の力で切り開えたじゃん。」
吉平「違うだけ? 必死で生きてさえいりゃあ 人生に無駄なこんなんて これっぽっちもねえだ。 おまんの選んだ道は 間違うちゃいん。 吉太郎…。 世間が何と言おうと おまんは 俺の誇りじゃん。 これまでも これっからも。 うん。 よ~く帰ってきてくれたな。」
吉太郎「(泣き声)」