茂木「さあ はなさん。 急がないと 今年中に終わりませんよ。」
はな「はい。」
安東家
庭
吉平「お~い 帰ったぞ~!」
かよ「おとう! お帰り!」
ふじ「あんた!」
もも「おとう!」
吉平「もも! お前 また重くなっただな。」
ふじ「もう 半年も帰ってこんだもん!」
吉平「今度は ちっと遠くまで行ってただ。 あっ ふじ これ 土産のまんじゅうじゃ。」
ふじ「お帰り。」
作業場
かよ「兄やん。 おとうが帰ってきただよ。」
吉太郎「ああ。」
居間
かよ「おとう。 お姉やんにあっただけ。」
吉平「ああ。 はなは すげえぞ。 華族のお嬢様たちにも負けとらん。 ふじ 食え。 英語の成績は 学校で一番じゃ。」
かよ「てっ! 一番?」
ふじ「て~! はあ~!」
もも「おじぃやん まんじゅう 食わんのけ。 うめえよ。」
周造「ああ。」
ふじ「吉太郎もひと休みして食えし。 朝から働きづめで疲れたら。」
かよ「聞いたけ? お姉やん 一番だとぅ。」
吉太郎「おなごが学問なんしたって ろくすっぽなもんにゃ ならんじゃんけ。」
吉平「なにょう言うだ。」
吉太郎「ほんなもん 嫁に行くのに邪魔なだけずら。」
吉平「あの女学校で一番取るのが どんだけ大変な事か はなの苦労を ちったあ分かってやれし。」
吉太郎「分かりたくもねえ。」
吉平「吉太郎!」
修和女学校
廊下
白鳥「もっと力を込めて もっと早く!」
はな「はい…。」
白鳥「廊下が終わったら カーテンとシーツのお洗濯。」
はな「はい!」
白鳥「先生のお部屋も 心を込めて お掃除するんですよ。」
はな「はい!」
白鳥「それから 学校中の窓ガラス拭き!」
はな「はい。」